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アートと人が熱い街、群馬・前橋の新たなランドマーク「白井屋ホテル」

2024.10.08

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〔特集〕最高の宿、感動のホテル 世界からも高評価を受けている、日本の宿とホテル。そこには、日本が誇る“おもてなし”の文化が息づいています。自然の中のリトリート、五感を刺激するアートなホテルや心と体を癒やすウェルネスのホテル、土地の恵みをいただく美食の宿など、家庭画報が取材し厳選した宿とホテルを、最新情報とともにご紹介します。前回の記事はこちら>>

・特集「最高の宿、感動のホテル」の記事一覧はこちらから>>

白井屋ホテル ── 群馬・前橋
アートと人が熱い街、前橋の新たなランドマーク

ここ数年、急速に活気を取り戻している群馬県前橋市。その起爆剤となったのが、アートに特化して2020年に開業した「白井屋ホテル」です。その創業者であり、前橋市の再開発を推進する田中 仁さんの案内で、ホテルと街を探訪しました。


旧利根川の土手をイメージして設計されたグリーンタワー。「白井屋ホテル」はこの建物と、もとのホテルを改築したヘリテージタワーからなる。白い建物群は個室サウナや宮島達男の作品を展示している空間。写真/©Katsumasa Tanaka

旧利根川の土手をイメージして設計されたグリーンタワー。「白井屋ホテル」はこの建物と、もとのホテルを改築したヘリテージタワーからなる。白い建物群は個室サウナや宮島達男の作品を展示している空間。写真/©Katsumasa Tanaka

独創的な建築や現代アートの数々、群馬の食材を使ったイノべーティブな料理などが話題の「白井屋ホテル」を筆頭に、前橋の街は今、新しい施設が続々と誕生しています。

中心にいるのは、同ホテルの創業者で、前橋市と連携して街の再開発を進める田中 仁さん。アイウェアブランド「JINS」のトップである田中さんが、出身地群馬の起業家を支援する活動を始めたのは2013年。同年、地元の人たちからの要請を受け、300年の歴史を持ちながら廃業していた「ホテル白井屋」の再生に乗り出しました。

デザインを担当したイギリスのプロダクトデザイナーの名を冠した「ジャスパー・モリソン ルーム」。

デザインを担当したイギリスのプロダクトデザイナーの名を冠した「ジャスパー・モリソン ルーム」。

美食ガイド『ゴ・エ・ミヨ』に3年連続で掲載されている「ザ・レストラン」では心躍る“上州キュイジーヌ”を提供。写真は赤城牛の藁焼き。

美食ガイド『ゴ・エ・ミヨ』に3年連続で掲載されている「ザ・レストラン」では心躍る“上州キュイジーヌ”を提供。写真は赤城牛の藁焼き。

地元の郷土料理おきりこみと同じ材料で作る「OKIRIKOMI」。

地元の郷土料理おきりこみと同じ材料で作る「OKIRIKOMI」。

群馬県出身の片山ひろシェフは田中さんが起業家支援目的で設立した「群馬イノベーションスクール」の元受講生。

群馬県出身の片山ひろシェフは田中さんが起業家支援目的で設立した「群馬イノベーションスクール」の元受講生。

「ホテルの運営はプロに任せるつもりで相談に行ったところ、『ホテルは人が集まるところにつくって初めて成り立つ。前橋では無理』といわれ、引き受けてもらえない。そこで『ホテルを目当てに人が集まる、デスティネーションホテルにしよう。そのためには建築デザインとアートが不可欠だ』と発想を変え、自分で動き始めました」。

決断の裏には、世界的に活躍する現代美術家、レアンドロ・エルリッヒの存在がありました。

1階の「ザ・ラウンジ」から見るレアンドロ・エルリッヒの「ライティング・パイプ」。夜間はカラフルに変化する。

1階の「ザ・ラウンジ」から見るレアンドロ・エルリッヒの「ライティング・パイプ」。夜間はカラフルに変化する。写真/©Katsumasa Tanaka

「ホテルプロジェクトのメンバーの紹介で、レアンドロと食事をしたところ、ホテルの設計者・藤本壮介のファンだといって、後日、工事現場を見に来たんです。彼は軀体がむき出しの吹き抜けの空間をじっくり見て、現在展示されている『ライティング・パイプ』を提案してきた。ホテルをアートの方向に振り切れたのは、彼のおかげです」。

写真/ ©Shinya Kigure

写真/©Shinya Kigure

白井屋ホテル
住所:群馬県前橋市本町2-2-15
TEL:027(231)4618
料金:1室2名利用で1泊2食付き1名3万7900円~ ご紹介した「ジャスパー・モリソン ルーム」は同7万5900円~(ともにサービス料込み)
全25室 IN15時/OUT11時

ホテルを拠点に街が「めぶく。」本気の人々がつくる前橋の未来

ジンズホールディングス代表取締役CEO、田中仁財団代表理事
田中 仁さん(たなか・ひとし)
1963年群馬県生まれ。1988年にジェイアイエヌ(現ジンズホールディングス)を設立。2014年に田中仁財団を設立。群馬県の地域活性化支援、起業家支援、前橋市の再開発に尽力。

田中さんが前橋市の再開発に携わるようになったきっかけは、ホテルの運営会社の人から聞いた「ホテルは街とともにある」という言葉でした。

「前橋はどんな街かと聞かれて、僕は答えられなかった。それで当時の前橋市長に会いに行き、一緒にビジョンをつくることにしました。ドイツのコンサルタント会社を招聘して考案してもらった『Where good things grow.(良いものが育つまち)』という言葉を、前橋市出身のコピーライターの糸井重里さんが『めぶく。』というコピーにしてくれました」。

前橋市を「めぶく街」にするための第一歩が、白井屋ホテルでした。

「街の人と外からやってくる人がホテルで出会い、互いに刺激し合って、めぶく。その先には戦略が必要ということで、商工会議所や市役所、民間の会社にも声をかけ、若い起業家たちを支援して、再開発を進めています。価値のあるものをつくれば、日本人も外国人も来てくれる。そして、価値とはその土地のDNAを生かしたユニークなものにこそあると確信しています」。

田中さんと前橋の人々の本気が、街の未来を切り拓いていきます。

新旧の人と店が入り交じり、街は「めぶき」の真っ最中。木造の長屋に飲食店が連なる「呑龍(どんりゅう)横丁」は新規出店者を集め、2021年11月に再出発。

新旧の人と店が入り交じり、街は「めぶき」の真っ最中。木造の長屋に飲食店が連なる「呑龍(どんりゅう)横丁」は新規出店者を集め、2021年11月に再出発。

昭和レトロ調の特注看板も楽しい。

昭和レトロ調の特注看板も楽しい。

赤煉瓦の建物は行列のできるパスタ店「GRASSA」。2018年の開業以来、商店街の活性化に貢献している。

赤煉瓦の建物は行列のできるパスタ店「GRASSA」。2018年の開業以来、商店街の活性化に貢献している。

斬新な外観の「まえばしガレリア」は2023年5月オープン。ギャラリーとレストラン、住居からなる。

斬新な外観の「まえばしガレリア」は2023年5月オープン。ギャラリーとレストラン、住居からなる。

昔ながらの鮮魚店「江原屋本店」は鮎の炭火焼きが評判。

昔ながらの鮮魚店「江原屋本店」は鮎の炭火焼きが評判。

田中さんが「これから一番面白くなる」と太鼓判を押すオリオン通り。

田中さんが「これから一番面白くなる」と太鼓判を押すオリオン通り。

「ラフコーヒー」は2021年8月開店。この日は店舗の拡張工事中につきカフェトラックで営業していた。

「ラフコーヒー」は2021年8月開店。この日は店舗の拡張工事中につきカフェトラックで営業していた。

ジャスパー・モリソンデザインの公衆トイレ。

ジャスパー・モリソンデザインの公衆トイレ。

岡本太郎の「太陽の鐘」は2018年に広瀬川河畔に設置された前橋再生のシンボル。

岡本太郎の「太陽の鐘」は2018年に広瀬川河畔に設置された前橋再生のシンボル。

(次回へ続く。この特集の記事一覧はこちらから>>

※本特集内に記載している料金は原則として1室2名利用時の、1泊朝食付き、または2食付き1名の最低料金です。時期や部屋により宿泊料金は変わります。別途サービス料、入湯税、宿泊税などがかかる場合があります。INはチェックイン時間、OUTはチェックアウト時間を表しています。時期により料理内容が変更になる場合があります。

この記事の掲載号

『家庭画報』2024年10月号

家庭画報 2024年10月号

撮影/西山 航 取材・文/清水千佳子

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