辛さを認めることが一歩踏み出す力になる塩沼 確かに。羽生さんは、辛さをあるがままに受け入れて栄養にできていると思いますか?
羽生 でも、年々メンタル面が弱くなっている気がしています。これが30歳になるということなのか? やっぱり10代の頃とは違いますよね(苦笑)。
塩沼 ほんとですか? 私は56歳になって、ますます強気、前向きになっていますよ(笑)。思わぬ障害やアクシデントに見舞われることもある。そんなとき、私は絶対に受け身にならないよう心がけています。何かが起きたら、逆に上から攻めていく。この辛さを栄養にして乗り越えたら、絶対にまた上に行けると自分を信じて。生きていく上で、その強気さってすごく大事だと思うんです。
羽生 さすがです。凹むときもあるんですか?
塩沼 凹むことは……ないです(笑)。毎日動き回っているので考え込む時間もなくて。もちろん、失敗や失礼をしたときには深く落ち込みますが、なるべく早く気持ちを整えて全力で埋め合わせをします。常にポジティブなマインドで、いい流れに乗っていきたいと思っています。
羽生 僕もあと20年ほどしたら、凹むことのない境地に達することができるのでしょうか(笑)。今日は、阿闍梨さんと自分への向き合い方、生きるとは? といったお話をたくさんさせていただきました。不確定な話題が飛び交うSNS時代であり、不安定な世界情勢の今だからこそ、自分は何者か、真実をしっかり見極められているのかということに意識を向けて、自分を見つめるきっかけや考えるヒントがこの対談の中にあれば嬉しいです。1人が変われば周りも変わり、国も変わり、世界も変わっていくと信じて生きていきたいです。
塩沼 おっしゃる通りですね。皆さん、「八風吹けども動ぜず」の心持ちで行きましょう。
左・月に一度行われる、護摩修法。右・4万8000キロ歩き通した、大峯千日回峰行より。
左・24年5月、『ファンタジー・オン・アイス』。右・2024年2月の『“RE_PRAY”TOUR』横浜公演より。写真/麻生えり
特集の続きは、
『家庭画報』2024年10月号の誌面でご覧ください。