新世代の鍼灸師に訊く 第11回(1)鍼灸院は「未病を予防する」ことから「病気を改善する」ことまで守備範囲が広く、身近な健康アドバイザーとしてもっと活用したい医療施設の一つです。
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更年期から起こりやすいトラブルの予防法・解決法「眼精疲労」
斉藤友造先生(斉藤鍼温灸マッサージ院)
斉藤鍼温灸マッサージ院 副院長 斉藤友造(さいとう・ゆうぞう)先生
1982年、東京都生まれ。東海大学を卒業後、一般企業に就職。25歳のとき、東京医療専門学校(現・東京呉竹医療専門学校)に入学。国家資格を取得後、東京都板橋区と練馬区で3店舗を経営する鍼灸院に就職。8年間勤務し、院長・統括マネージャーを務める。2016年より現職。院長である父を補佐し、本院と分院の2店舗の運営に携わる。
首肩の筋肉を緩め、頭部への血流を促し目や全身のつらい諸症状を軽減する
斉藤鍼温灸マッサージ院 副院長の斉藤友造先生は、大学卒業後、一般企業に就職したものの、鍼灸師として活躍し患者さんに喜ばれる父の姿を見るうちに、この世界に興味を持つようになったといいます。
父・斉藤隆夫院長(中央)は低周波鍼通電パルス治療を鍼灸学校で37年間指導してきたこの分野の第一人者。分院を含め7名のスタッフで日々の診療に取り組む。
そして、自身も鍼灸師となり、臨床を重ねていく中で、その奥深さに魅了され、現在では「一人でも多くの人に鍼灸のよさを知ってほしい」とインターネットなどを通して積極的に情報を発信しています。また、社会の信頼を得るには鍼灸業界の質の向上が必要だと考え、近年は鍼灸師を対象としたセミナーを定期的に開催し、心技を兼ね備えた鍼灸師の育成にも熱心に取り組んでいます。
眼精疲労の悪化から頭痛などの身体症状に発展することも
目の疲れや痛み、かすみ目、まぶしさ、充血といった不快な目の症状を起こしやすい生活環境の中で私たちは暮らしています。これらの症状の多くは休息をとると回復しますが、目や脳を休ませても回復しない状態が眼精疲労です。悪化すると頭痛、肩凝り、吐き気・嘔吐、めまいなど身体症状に発展することもあります。
「眼精疲労は、目のトラブル(屈折異常、老眼、ドライアイ、白内障、緑内障、眼瞼下垂など)に起因するだけでなく、パソコンやスマートフォンなどデジタルデバイスの画面を長時間見続けることによって発症するVDT症候群、高血圧、虫歯・歯周病、貧血、自律神経失調症、更年期障害などでも引き起こされるといわれています。生活スタイルや全身の病気に関連して発症することがあるため、治療する際には原因を特定したうえで直接的なアプローチが欠かせません」
斉藤先生は、目の周りだけでなく頭部全体の緊張を、鍼の刺激で和らげて血液やリンパ液の流れを改善し、老廃物を流すことによって眼精疲労のつらい症状を軽減していきます。また、得意とする美容鍼や頭の鍼の技術と知識も眼精疲労の施術に積極的に取り入れています。
「眼精疲労の諸症状をはじめ、原因となる目のトラブルに効果があるとされる経穴(ツボ)に加え、下関(げかん)、巨髎(こりょう)、四白(しはく)などにも必ず施術します。これらの経穴には顔のむくみ、シミ、くすみ、ほうれい線のシワ、目の下のたるみ、目の周りのくまなどを改善する効果もあり、女性の患者さんにはとても喜ばれています」
頭の鍼は、眼精疲労や原因となる自律神経失調症によく効くほか、症状が悪化して頭痛を起こす人にもおすすめです。抜け毛、薄毛、認知症の予防効果も期待され、美容鍼と同様に女性を中心に希望者が多いといいます。
鍼治療の効果を上げるために低周波鍼通電パルス治療を併用
斉藤先生は頭部とともに首・肩も重点的に治療します。なかでも首の後ろにある後頭下筋群の緊張を緩めることを重視しています。
マッサージで背中の張りをほぐす。
「この周辺には、脳への血液供給にかかわる重要な血管である椎骨動脈が存在し、筋肉の凝りがあると頭部への血流が妨げられるため、眼精疲労の悪化要因にもなるからです」。
低周波鍼通電パルス治療を行う際は患者さんが感じる刺激の程度を確認しながら通電量を調整する。
低周波鍼通電パルス治療を行う際は患者さんが感じる刺激の程度を確認しながら通電量を調整する。 低周波鍼通電パルス治療を併用しているのも大きな特徴です。これは鍼を電極として筋肉や神経に電気を流す方法です。
目の周りだけでなく後頭下筋群も重点的に治療する。
「鍼を刺すことは内出血のリスクを伴います。当院ではそのリスクを避けるために直径0・2ミリ前後の細い鍼を使っています。こうした細い鍼の刺激でも、使用する鍼の本数を少なくしても、そして短時間でも、十分な効果が得られるように電気刺激を加えているのです。その人に心地よい通電量になるよう調整していますので、施術中に眠ってしまう人も少なくありません」。
これらの治療により眼精疲労のつらい症状が軽減した後は、日常的な改善を目指し、個々の状態や状況に応じて対処法や予防法をアドバイスします。「眼精疲労を引き起こすとセルフケアだけで回復するのは難しいため、鍼灸治療をぜひ一度お試しください」。
診療案内
東京都板橋区宮本町6-9
TEL:03(3965)2548 予約制
診療時間/月曜~土曜 9時~20時
休診日/日曜
診療費/初検料1000円
鍼灸治療(30分以内)4000円
頭の鍼を追加+2000円
美容鍼 7500円
整体・マッサージ (30分)4000円~ ほか
https://saito-harionkyu.com/ ※次回へ続く。
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