連載「12か月のフラワーリース」 世田谷区にアトリエを構える「宙花(そらはな)」のフローリスト戸部秀介さんが作る、季節のフラワーリースを毎月紹介します。空間を華やかに彩ってくれるフラワーリースと共に、花のある暮らしを始めましょう。
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10月のリース「木の実」
バラの花ようなに見えるのがシダーローズ。ほかにカラマツやトドマツなどの松ぼっくり、ハスの花托、白くさらしたユーカリ・ベルガムナッツや綿殻などを集めたリース。落ち着き感のあるナチュラルな色合いは、どんなテイストのインテリアにもしっくりなじみます。直径約20cmの木のつるで編んだリースベースを利用。
戸部秀介/Shusuke Tobe35歳の時にフローリストへと転身。大手生花店、フランス人フラワーデザイナーの店で経験を積み、2016年に東京都世田谷区の中町に「宙花〜sora hana~」をオープン。リースを得意とし、ワークショップにも力を注ぐ。インスタグラム@sorahana.jp
秋の木々からの贈り物、木の実のリース
昼夜の気温差が広がり、やっと秋らしさを感じる季節になりました。秋といえば収穫の季節。いろいろな木々がかわいらしい実や造形美を感じさせる松ぼっくりなどをつけます。そんな木の実を集めたリースを飾ると、室内にいながら秋の雰囲気に浸ることができます。
生の実でそのままドライにして楽しめるのは、ローズヒップ(バラの実)やユーカリの実など、それほど多くはないのですが、花市場ではこの時期にすでにクリスマス用の飾りとして、松ぼっくりやさまざまな加工を施したドライの実が出回ります。さらにドライフラワーなどの素材を扱うショップにも出向き、豊富なラインナップの中から「これ、いいな!」と感じる珍しい素材も入手。いろいろな組み合わせで雰囲気が異なる木の実のリースを制作しています。
松ぼっくりはマツやスギなどの針葉樹がタネを守る器官として作る球果で、どんぐり同様に木の実に分類され、木の種類によって形や色、サイズが微妙に異なります。とくにおもしろいのがシダーローズと呼ばれるヒマラヤスギの松ぼっくりで、乾燥させると片鱗が次第に落ち、先端部分のみがぽろっと取れるのですが、それが名前通りバラの花のような形をしています。これらの松ぼっくりは、天然の色そのままや、脱色して白くしたもの、また、シルバーなどに着色したものもあり、作りたいテイストに合わせて選ぶことができます。
木の実のリースは、木のつるを編んだリースベースを利用するケースがほとんどで、グルーガン(ピストル形のホットボンド)で木の実や松ぼっくりを接着していきます。大小をバランスよく並べると同時に、どちら向きで固定すると見栄えがよいかも考えて、きれいな円形になるよう制作します。
ごく淡いピンクのスターチス‘雲竜’、ピンクのロウでコーティングした2種のユーカリの実。3種だけのシンプルなリースは、イチゴミルクのイメージで制作しました。かわいらしくエレガント。秋にはそんな雰囲気もよく似合うと思います。どちらの素材も色褪せしにくいので、数年単位で楽しんでいただけます。直径約30cmの木のつるで編んだリースベースを利用しています。
秋の実ものといえば、ローズヒップ=バラの実。生のままリースに使うと、少ししわは寄るものの鮮やかな赤はそのまま残ります。クラシックアジサイ‘ピンパーネル’にコニファーの‘ブルーアイス’、ヒロムスギ、丸葉ユーカリをあしらったベースに、ノイバラの実を散らし、シック&エレガントなリースに。直径約25cmの金属製リースを使用し、ボリューム感がありながらもすっきりとした仕上がりにしました。長いままのワイヤーを巻き付けて花材をバランスよく固定していきます。
生のままドライにして楽しめるユーカリにはいろいろな種類があります。ユーカリ・ポポラスの実と葉、ユーカリ・グニーと丸葉ユーカリの葉を使ってリースにしました。茶色い葉は、最近は庭木としても人気のオージープランツのグレビレア。表がグリーンで裏が茶色というリバーシブルなリーフです。直径約30cmの木のつるで編んだリースベースを使用。