〔特集〕錦秋の京都を訪ねて イロハモミジの燃えるような赤に染まる京都の秋。平安貴族たちが競い合うように和歌や日記に残した紅葉の名所は、今も私たちに眼福を与えてくれます。人気の観光地にあっても、未だ静けさの残る奥京都へ秋の美味と令和の紅葉狩りへと皆様をご案内いたします。
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平安貴族の秋に想いを寄せて
『源氏物語』を茶の湯で愉しむ秋
源氏物語をお題にしたお道具立てとお菓子で愉しむ茶会。御本の白い模様が鹿の斑点のように映る茶碗は「龍田川」の名がつく。
平安貴族たちを魅了し、令和の今も私たちの心を摑む『源氏物語』。「紅葉賀」を趣向にしたお菓子とお茶一服を楽しむ錦秋の京都での至福のひとときにご案内します。
深まる紅葉のうつろいを菓子に映して
上:八入(やしお) 羽二重製 中:紅葉(もみじ) 浮島製 下:黄葉(こうよう) きんとん製
「御菓子司 聚洸(じゅこう)」であつらえた物語の第7帖「紅葉賀」にちなんだ主菓子。色の濃淡や意匠で錦秋を表現し、菓銘の一部には色の重なりを表す染色の言葉を用いた。こちらのお菓子は2024年10月20日〜2024年11月20日に聚洸の店頭にて購入可。1セット1500円(3種各1個入り)、5日前までに要予約。発送不可。
●御菓子司 聚洸
住所:京都市上京区大宮通鞍馬口下ル筋違橋町548-4
TEL:075(431)2800
千年の名作を今の暮らしの中でも学んで遊ぶ ── 梶 裕子さん(「うつわや あ花音」主人)
秋草と鹿の棗、茶杓は玄々斎「月の友」、烏帽子型の水指。朱雀院への行幸で「青海波」を舞う源氏と頭中将などを描いた屛風は江戸期のもの。
千年にわたって、読み続けられた不朽の名作『源氏物語』。平安時代の貴族たちを取り巻く劇的な物語の展開に心惹かれ、その奥に秘められた機微に触れることもできます。
代々続く古美術商の家に生まれ育ち、現代の器の店を営む、梶 裕子さんも源氏物語の世界に魅了された一人。長きにわたり原文講読の勉強会を開き、物語をテーマにしたお茶会も催してきました。
「紅葉賀」を趣向にお菓子とお茶一服を楽しむ会は、菊乃井が営む「無碍山房」にて開催。
京都にかかわりの深い作家の器を扱う「うつわや あ花音」の主人・梶 裕子さん。紅葉をあしらった秋の装いで、帛紗は源氏香の柄。点前座にかかる軸は「重陽同詠伴菊延齢」。
「源氏物語は、写本をはじめ屛風やかるたなど、書物や美術品、遊びのアイテムとしても愛されてきました。和歌や源氏香のような高尚な表現もあり、筋書きだけでなく細部を知ることでより深く楽しめます」。
屛風に描かれた物語の1シーンや、写本の文字や挿絵にも書き描いた人の個性がうかがえ、知るほどに宮廷貴族が織りなす、王朝世界の美しさに引き込まれます。
江戸時代の公家、高辻豊長が書き写した写本や、物語内で貴族たちが詠み交わした795首が揃う「歌留多」なども展示される。
現代作家の器でも源氏の世界を楽しむ梶さんのコレクション。右・手前から鼻先が赤い「末摘花」(脇山さとみ作)、「紅葉賀」、のちの紫の上「若紫」(内田裕子作)を描いた茶碗。左・「野分」の1シーンが浮かぶ虫籠はガラス作家・江波冨士子と木工作家・佃 眞吾の共作。ガラスの虫は皆川禎子作。
その世界観を満喫するお茶会を、今回『家庭画報』読者のために企画してくださいました。
「第7帖の紅葉賀を趣向に道具立てをし、お菓子はあつらえてみました。このような贅沢ができるのも源氏物語発祥の地、京都だからかもわかりませんね」。
秋たけなわ、令和の京都で千年の物語に浸る、特別なひとときになりそうです。
【10/31締切】『家庭画報』読者限定「紅葉賀」の茶会と「鮨 青」を楽しむ会 への応募はこちら⇒(次回へ続く。
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