〔特集〕錦秋の京都を訪ねて イロハモミジの燃えるような赤に染まる京都の秋。平安貴族たちが競い合うように和歌や日記に残した紅葉の名所は、今も私たちに眼福を与えてくれます。人気の観光地にあっても、未だ静けさの残る奥京都へ秋の美味と令和の紅葉狩りへと皆様をご案内いたします。
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奥京都で紅葉狩りの昼膳&アフタヌーンティーを
菊酒とともに始まるコースは、里山の秋の味覚を盛り込んだ前菜から。手前は名物の栃餅こんにゃくやさばずし、栗などの口取り、中は煮炊きしたきのこや野菜、枝豆かき揚げびたし、奥は焼き松茸、鴨肉、子持ち鮎、むかご。
観光客で賑わう市街地から足を延ばし、遠足気分で美味なる紅葉狩りへ。歴史を物語る凜とした雰囲気とその土地ならではの旬味を求めて、旅の目的地となる美味処へご案内します。
〔花背〕美山荘
平安末期の遺香の地で出合う、野趣と雅
京都の里山、花背の山あいにある料理旅館「美山荘」の秋の訪れは市街地より少し早く、10月後半になると紅葉が始まり、錦彩のグラデーションに包まれます。
京都の街中から北へ車を走らせること1時間。鄙なる里山に囲まれて佇む、野趣で雅な味を受け継ぐ料理旅館。
平安時代末、鳥羽上皇の勅願により創建され、修験道の聖地であった大悲山峰定寺の宿坊として1895年に創業し、今は自然を享受しながら食材に味を添える相伝の「摘草料理」で多くの食通を魅了しています。
常連に愛され、新たなお客様の感動を生む、秋に食べたい味わいの「銀杏味噌」。先代考案の摘草料理の本質をとらえた一品。
柚子ピールの葛餅、自然薯のスフレ、鰻の塩焼きで、秋の空模様を表現した椀物。
「いわゆる山菜料理ではなく、うちらしい野趣に気品を添えた料理で、最近は次の世代の方たちにも楽しんでもらえる新しい表現も取り入れています」と話す、ご主人の中東久人さん。
秋は、雅な紅葉の三段重に野山や川の幸をふんだんに盛り込んだ前菜や、焼きながら味わう銀杏味噌、花背の秋空にインスパイアされて作ったという新しい試みのある煮物椀など、五感に響く味覚が緩急をつけた構成で供されます。
里山の未来を見据え、花背の環境保護や活性化にも注力している4代目主人・中東久人さん。
地元の人や文化、風土とかかわりながら思いや物語を深めた真味と新味があり、いずれも食材の力が生かされた美味尽くし。心を和ませ、目を楽しませ、心を躍らせる、秋の口福眼福へと誘ってくれます。
美山荘住所:京都市左京区花背原地町375
TEL:075(746)0231
営業時間:12時〜12時30分、18時〜19時(ともに最終入店)
定休日:不定休
料金:昼夜ともにコース1万8000円〜 写真の料理は2万8000円のコース。
※要予約
(次回へ続く。
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