喪失感からの立ち直りを後押しする心がけは何かあるでしょうか。前野先生 人と話す、自然の中に身を置くなど癒やしの方法は人それぞれ。今は一人で哀しみにどっぷり浸りたい、そのうちに誰かに思いを聞いてもらいたくなる、など時間の経過でも変わってくるでしょう。身近に死別体験をされた方がいたら、聞き出そうとするのではなく「話したければいつでも聞くよ」と気にかけていることを伝える姿勢が大事ですね。
マドカさん 私たちが尊敬する禅僧で精神科医、そしてマインドフルネスの専門家でもいらっしゃる川野泰周さんは、「まずは何も考えずに心と体をやすませることが大事。少し気力が湧いてきたら昔の幸せな出来事を思い出すのがよいでしょう」とおっしゃっています。長年、遺された方々に寄り添ってこられたご住職のお言葉は心に深く染み入ります。
喪失の哀しみを癒やすには
禅僧・川野泰周さんの言葉
(臨済宗建長寺派林香寺住職・精神科医)「哀しみがあまりに深く、生きる気力すら失いかけているようなとき、まず大切なのは
何も考えず何もせず、ただただ心と体をやすませてあげることです」「少しでも気力が湧いてきたならば、
故人を思い出し『ありがとう』の言葉を念じる『感謝の瞑想』が心の支えとなるであろうと私は考えます。遠い記憶を辿って見つけ出していただきたいのは、大切な人と紡いだ昔の幸せな出来事。
輪郭のあいまいな記憶ほど美しく、感謝の念を呼び覚ましてくれるでしょう」
『家庭画報』2022年6月号「喪失の哀しみに寄り添う言葉の力」より