名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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珍しい名字:甲斐荘(かいのしょう)
「甲斐荘」という名字があります。「かいしょう」ではなく、「かいのしょう」と読みますが、それほど難読というわけでもありません。ただかなり珍しく、実際に見たことある人は少ないでしょう。
ところで、甲斐庄楠音(かいのしょう・ただおと)という画家をご存じでしょうか。暗い色調の独特な人物画が多く、長く忘れられたような存在でした。近年になって再評価され、各地で展覧会も開催されるようになったので、絵を見ると「見たことがある」という人も多いと思います。
岩井志麻子の小説『ぼっけえ、きょうてえ』の表紙絵を書いた画家というとわかる人もいるでしょう。
この甲斐庄楠音、画家としては「甲斐庄」と書きますが、本来は「甲斐荘」で、甲斐荘家は江戸時代は大身の旗本でした。
ルーツは河内国錦部郡甲斐荘(現在の大阪府河内長野市)で、楠木氏の子孫と伝えられています。戦国時代には烏帽子形城に拠って河内守護の畠山氏に従っていました。
のちに徳川家康に仕えて旗本となり、江戸時代には長崎奉行や、勘定奉行、南町奉行などをつとめた人物も出るほどの名家となりました。
楠音自身も京都に広大な屋敷を持ち、戦前は殿さまのような暮らしをしていたといわれています。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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