名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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鴻池(こうのいけ)
江戸時代、江戸で一番の豪商というと何を思い浮かべるでしょうか。個人としては紀伊國屋文左衛門(紀文)が有名ですが、紀文は1代で没落しました。代々続いた豪商としては、越後屋呉服店を経営した三井家が有名です。
では、大坂一の豪商は誰でしょうか。大坂で一番の豪商は鴻池家といわれています。三井家は明治以降の財閥として続き、今でも銀行や商社の名前になっているので誰でも知っていますが、鴻池家の名前はあまり残っていないため、知らない人も多いと思います。
豪商鴻池家の祖は、戦国時代の武将で尼子十勇士の一人山中鹿介幸盛(講談では鹿之介)です。とはいっても、教科書に登場するわけでもなく、今では知名度はあまり高くありません。しかし、かつては、三日月に向って「我に七難八苦を与え賜え」と祈ったという話とともに、知らない人はいない講談のヒーローでした。
この鹿介の二男信六幸元が摂津国川辺郡鴻池(現在の兵庫県伊丹市鴻池)に住んで鴻池氏を称し、清酒造りを始めたのが祖と伝えられています。
江戸時代初期に大坂に進出、海運業に乗り出して大名貸も行ったほか、両替店を開いて豪商となり、本家は代々善右衛門を名乗りました。
江戸後期には実に全国の三分の一の藩が鴻池家から金を借りていたといい、大名でも頭の上がらない天下の豪商でした。
鴻池家は明治維新後に鴻池銀行を設立しました。鴻池銀行はのちに三和銀行となり、現在は三菱UFJ銀行となっています。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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