睡眠を科学する 質の高い睡眠こそ長生きの鍵! 第1回 世界中の睡眠研究から、睡眠と深刻な病気との関係が明らかになっています。毎日きちんと眠り、心と体をリセットすることで、年齢に関係なく最高のコンディションを保つことができ、それは健康長寿にもつながります。
健康をおびやかす睡眠不足の蓄積
リラックス効果のあるハーブティーはスムーズな入眠の助けになる。
日本睡眠学会指導医 医療法人RESM理事長
白濱龍太郎先生 健康長寿に欠かせない“睡眠の質”への対策
「睡眠不足では死なない」と多くの人は思っていますが、睡眠専門医の白濱龍太郎先生はとんでもない思い違いだと指摘します。「人が眠るのは生命維持のために欠かせない営みだからです。睡眠をとることで日中の活動で破壊された細胞組織を修復したり、蓄積された疲労物質を取り除いたり、免疫機能を高めたりしながら明日への活力を養っているのです」。
睡眠不足が深刻な病気を引き起こすことも世界中の睡眠研究から明らかになっています。日本人の3大死因である心臓病、脳卒中、がんは、睡眠不足によって発症リスクが数倍高まり、またメンタル面にも悪影響を及ぼし、うつ傾向が強まったりすることがよく知られています。「健康で長生きをしたければ、食事や運動と同じように睡眠にも注意を払い、その質を高めていく対策が欠かせません」
睡眠と病気の知られざる関係
糖尿病
4時間睡眠が1週間続くと糖尿病の初期状態に睡眠不足によってインスリンの働きが低下する。シカゴ大学の研究では、若い健康な人の睡眠時間を4時間に制限すると、たった1週間で糖尿病の初期のような高血糖状態になった。また、深い睡眠をとらないと糖尿病のリスクが高まることもわかっている。
高血圧
5時間未満の睡眠で発症リスクが一気に高まる睡眠不足になると交感神経が夜も活発に働き続け、血管が傷むことが発症に影響している。女性ホルモン減少の影響で血圧が上がりやすい更年期女性は睡眠不足に要注意。ハーバード大学の研究では、血圧が高めの人が睡眠時間を1時間増やすだけで血圧が8~14mmHg低下した。
動脈硬化
睡眠不足で高血圧になると動脈硬化が進行する睡眠不足によって高血圧になると動脈硬化が進行する。この2つには相関関係があり、高血圧が続くと動脈硬化になり、動脈硬化が進むとさらに血圧が高くなる。動脈硬化の進行で心臓病や脳卒中の発症リスクも高まる。
心臓病
睡眠時無呼吸症候群では心筋梗塞発症リスクが6.9倍に睡眠不足が続くと高血圧や糖尿病を発症し、それによって動脈硬化をきたし、狭心症や心筋梗塞など重篤な病気の発症リスクも高まる。睡眠時無呼吸症候群になった人はそうでない人に比べて心筋梗塞が6.9倍、心臓突然死が2.6倍に上昇する報告がある。
脳卒中
睡眠時無呼吸症候群では脳卒中発症リスクが3.3倍に睡眠不足による高血圧や糖尿病の発症が動脈硬化を招き、心臓病と同様に脳梗塞や脳出血などの重篤な病気の発症リスクも高まる。睡眠時無呼吸症候群になった人はそうでない人に比べて脳卒中が3.3倍に上昇する報告がある。
がん
前立腺がんと乳がんは6時間睡眠が発症の分岐点NK細胞をはじめとする免疫機能が最も活性化するのは副交感神経が優位になる睡眠中。よい眠りが免疫力を高め、活性酸素を増やさない状態をつくり、がんの発症を予防する。また、メラトニンには性ホルモンの過剰分泌を抑制する効果もあり、6時間以上の睡眠時間をとることで、性ホルモンが関係する前立腺がんと乳がんの発症リスクを低下させられることがわかっている。
認知症
起きている時間が長いと認知症の発症リスクが上昇脳神経細胞を破壊するとされるアミロイドβ を処理するには6.5時間以上の睡眠が必要とされる。睡眠不足が長期間続くとアミロイドβが蓄積され、それだけ認知症の発症リスクが高まる。国立精神・神経医療研究センターの研究では、30分程度の定期的な昼寝がアルツハイマー型認知症の発症リスクを5分の1程度まで低下させられることがわかっている。
うつ
4時間半睡眠が5日続くとうつ傾向が強まるうつと不眠は表裏一体で、不眠傾向の人はうつ病の発症リスクが40倍高いといわれている。国立精神・神経医療研究センターの研究では、4時間半睡眠が5日間続くだけで、不安や混乱、抑うつ傾向が強まり、脳機能がうつ病と似たような状態になることがわかっている。
肥満
睡眠が4時間以下になると肥満率が7割アップコロンビア大学の研究で、7時間睡眠を基準に肥満になる確率を比較したところ、6時間では23パーセント、5時間では50パーセント、4時間以下では73パーセント高まることがわかっている。睡眠不足によって食欲をコントロールするホルモンの分泌異常が起こり、成長ホルモンの分泌も抑制されて基礎代謝も低下するといわれている。
多くの病気を引き起こす「睡眠時無呼吸症候群」セルフチェック
高血圧、動脈硬化、不整脈、心臓突然死、脳梗塞などの背景には睡眠時無呼吸症候群が隠れていることも。この機会にぜひチェックを。
閉経後の女性は要注意![ ]1 最近体重が増えた、または肥満気味である
[ ]2 あごが小さい、あごが引っ込んでいる
[ ]3 舌、扁桃腺、口蓋垂が大きい
[ ]4 口で呼吸していることが多い
[ ]5 鼻が詰まりやすい、鼻炎などの持病がある
[ ]6 高血圧、糖尿病などの生活習慣病がある
[ ]7 妊娠中または更年期以降の女性である
[ ]8 タバコを吸う
[ ]9 毎日またはときどきお酒を飲む
[ ]10 睡眠導入薬などを服用している
[ ]11 仕事がシフト勤務で不規則
[ ]12 仕事でよく運転する
[ ]13 よく寝汗をかく
[ ]14 何度もトイレに起きる
[ ]15 いびきが大きいと指摘されたことがある
[ ]16 夜寝ているのに、日中に極度の眠気がある
[ ]17 運転中や仕事中に起きていられなくなったことがある
[ ]18 朝目覚めると、激しい頭痛や倦怠感がある
[ ]19 極度の眠気で仕事や家事に集中できない
[ ]20 意思や判断力が衰えてきた気がする
3つ以上あてはまる人は医療機関を受診!専門医リストはコチラを参考に。日本睡眠学会「睡眠医療認定一覧」
https://jssr.jp/list (次回へ続く。)
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