〔特集〕新紙幣肖像の偉人 北里柴三郎の遺産(前編) 新しい千円札の肖像画として一躍話題の的となった北里柴三郎ですが、何をなし、どのような人だったのかご存じでしょうか? 本企画では、ひ孫にあたる北里英郎さんと、「北里柴三郎記念博物館」の母体である「北里柴三郎記念室」を創設した大村 智さんに特別インタビュー。北里柴三郎の知られざる素顔と今こそ生かしたい教えに迫ります。
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北里は、現代医療の根幹をなす抗体療法のパイオニア
財務省から熊本県の小国町にある「北里柴三郎記念館」に寄贈された新紙幣の肖像コンテ画。細密な筆致を原寸で見ることができる。
微生物は、35億年ほど前から地球上に生息し、種をつないできた生物の起源です。紀元前からその存在は知られていましたが、「ある一定の病気には一定の微生物が見出される」という、伝染病の病原体を証明する基本原則を提唱したのが、留学先の恩師、ドイツ人のローベルト・コッホ博士でした。北里はこの師に学び、ドイツ留学の4年目にして破傷風菌の純粋培養に成功します。
さらに翌年、その毒素を中和する物質「抗毒素」(=抗体)を見出し、「血清療法」を確立します。これは現代医療の根幹をなす「抗体治療」の原点にほかなりません。伝染病に打つ手が一つもない時代に治療の新しい扉を開いたのです。
この偉業で世界的に高く評価された北里は、欧米各国からのいくつもの招聘を断り帰国。ペスト菌の発見など、伝染病の撲滅に向けて邁進すると共に、公衆衛生の意識に乏しい日本人に予防の大切さを説いて回り、病原菌から国民を守ろうと奮闘します。
愛知県犬山市にある「博物館 明治村」に移築された北里研究所本館・医学館。1915(大正4)年に建てられた。八角尖塔を頂く木造2階建てで、外観はドイツのコッホ研究所を模している。