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干柿の豊かな甘みと、なめらかな自社製あんがよく合う一品「粋甘粛 赤あん」

2024.11.19

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エッセイ連載「和菓子とわたし」

「和菓子とわたし」をテーマに家庭画報ゆかりの方々による書き下ろしのエッセイ企画を連載中。今回は『家庭画報』2024年12月号に掲載された第40回、大橋洋治さんによるエッセイをお楽しみください。

vol. 40 幸せの和菓子
文・大橋洋治

私は昭和15(1940)年、中国東北部、当時の満州国のジャムス市で生まれた。中国で記憶にある甘味は、姑娘(クーニャン)というほおずきの実のほのかな甘みくらいしかない。そして終戦の混乱の中で、1年以上の逃避行の末、ようやく日本に辿り着いたときには、6歳の私は多くの引き揚げ者同様、栄養失調気味で、小学校も1年休学したほどだった。両親の郷里の岡山県に身を寄せたが、終戦直後の食糧事情で、中々甘いものは手に入らなかった。ようやく私の体調も恢復(かいふく)して小学校に通えるようになり、食糧事情も好転してきたころ、初めて口にしたお菓子が、備中高たか梁はしの名産品「柚餅子(ゆべし)」だった。ゆずの香りがする甘い柔らかな餅の皮は、嚙みしめるほどに甘さと風味が広がる、至福の味だった。米や3度の食事すら満足に取れず、いつもひもじい思いをしていた終戦前後のことを思うと、こんな美味しいものを食べている幸せを幼心に嚙みしめたものだった。


和菓子は人を笑顔にし、幸せにしてくれる。学校を卒業し、社会人になり、いろいろな甘いものを食べる機会が多くあったが、私は断然、和菓子派だ。和菓子の深みのある、複雑で優しい甘さは、心まで癒やしてくれる気がする。今ではあんこに目がなく、いただいた最中には手が止まらないし、締めのデザートには、あんこたっぷりの「あんみつ」を注文する。アイスクリームにも必ずあんこを添えてもらうほどだ。シンプルでストレートな甘さのあんこは、ほっと一息つかせてくれる。疲れている自分へのご褒美には最高だ。しかし、柚餅子の素朴な甘さが、私にとっては一番幸せを実感できるときだ。五感の中でも嗅覚は記憶につながりやすく、味覚の記憶は解像度が高くないとも言われる。いや、私にとって今も変わらぬ柚餅子の味は、日本に帰った安心、学校に行ける喜び、ご飯が食べられる満足、といったことを思い出させてくれる、「幸せの記憶」の味だ。

大橋洋治
「ANAホールディングス」相談役。岡山県出身。 慶應義塾大学法学部を卒業後、1964年に「全日本空輸」入社。成田空港支店長、ニューヨーク支店長、人事勤労本部長などを経て、2001年に代表取締役社長就任。13年にANAホールディングス取締役会長、15年より現職。12年には旭日大綬章を受章。
宗家 源 吉兆庵
TEL 0120-277-327
https://www.kitchoan.co.jp/
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