新紙幣肖像の偉人　北里柴三郎の遺産【後編】ノーベル賞受賞・大村 智さんに訊く北里スピリッツ

北里先生の時代と変わらない感染症対策の基本のキ

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行によって、にわかに感染症に注目が集まりましたが、個人にできる感染症対策というものは北里先生の時代からまったく変わっていません。

先生は、医者の役目は病気の「治療」だけでなく「予防」にあると考え、予防医学の普及に努められました。ペスト菌発見の折には、今後も人類は次々と感染症に出合うことになると思われるが、「正しい知識をもって行動すれば、恐れることはない」と語っています。

北里の座右の銘「終始一貫」を自筆した書。大村さんが館内でぜひ見てほしい一点だという。「予防衛生・国利民福」の目標を掲げて邁進した生涯は、まさに終始一貫していた。

密閉・密集・密接の「３密」を避け、人混みではマスクを着用し、帰宅したら手洗いとうがいをしていれば、そう簡単には感染しませんし、人にうつすリスクも減らせます。ちなみに、私は「鼻うがい」を励行しています。生理食塩水を少し水で薄めるか、水に徐々に食塩を足していけば、しみなくなる濃度がわかるようになるので、それで鼻うがいをし、目も洗うことをおすすめします。風邪もひかなくなります。


ともかく、今では北里先生に対する畏敬の念は誰よりも強いという自負があるので、先生が新紙幣の肖像に選ばれたことを「いちばん喜ぶ資格があるのは俺だ」と思っています（笑）。

1908（明治41）年、恩師のコッホが来日した際、嚴島神社で撮影した写真。

そういえば、新紙幣の発行については、おもしろい偶然がありました。北里大学白金キャンパス内には先生の恩師であるローベルト・コッホ博士と北里先生をお祀りした「コッホ・北里神社」があり、毎年お二人の命日には例祭を執り行っています。

北里大学白金キャンパス内のコッホ・北里神社に参拝する大村さん。この神社は1910（明治43）年にコッホの遺髪を祀って北里が建てたコッホ祠と、1931（昭和6）年にその傍らに北里の御霊を祀って門下生らが建てた北里祠を合祀し、戦後造営された。

その神社の一角に、門下生で赤痢菌の発見者である志賀 潔先生が植えた枝垂れ桜のうちの1本が枯れてしまったため、私が手配し、神木としてカラタネオガタマを植えました。2019年4月6日に植樹祭を行ったのですが、財務省が新紙幣の発行を発表したのはそのわずか3日後でした。ちょっと御利益（ごりやく）が早すぎるのではないかと思いましたね（笑）。

ノーベル賞のメダル（複製）。下写真の展示室にて展示中。

新紙幣発行に合わせ、北里柴三郎の展示室の向かいに新設された展示室。大村さんに至る北里スピリッツの継承者たちの業績を紹介している。

北里柴三郎記念博物館
住所：東京都港区白金5-9-1
TEL：03（5791）6103
入館料：無料
開館時間：10時～17時（最終入館は16時30分）
休館：第2・第4・第5土曜、第1・第3・第5日曜、年末年始、夏期休暇、4月20日、11月5日

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