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美味手帖

熟成期間や合わせるワインにもこだわって。「コンテ」チーズの楽しみ方

2024.11.29

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〔特集〕フランス・ジュラ山脈の麓で生まれる“チーズの王様” 「コンテ」の魅力を訪ねて チーズ大国フランスで最も親しまれているのが「コンテ」。その理由はAOP(原産地呼称保護)チーズとして第一の生産量であることだけでなく、その比類ない豊かな風味にあります。そんな“チーズの王様”はどのようにして育まれるのか?その奥深き魅力を知る旅へとご案内いたしましょう。前編の記事はこちら>>

・特集「「コンテ」の魅力を訪ねて」の記事一覧はこちらから>>

コンテチーズを五感で味わうテイスティング術

〔右・18か月熟成〕
通常フランスで食されている平均熟成期間8か月に比べるとはるかに熟成が進んでいるが、本場のガストロノミーレストランではこれでも若い。なめらかなテクスチャーで、牛が夏の間に蓄えた草花の香りさえ感じさせるような優しい風味。


〔中・29か月熟成〕
熟成が進んだコンテには、ヘーゼルナッツやフルーツを思わせるような、ミルク以外のさまざまなアロマを感じさせる奥深さがある。熟成による凝縮感は、塩味よりもむしろ味わいと香りの余韻を長く続かせるような効果をもたらしている。

〔左・36か月熟成〕
全体の数パーセントしか存在しないという30か月以上熟成された貴重なコンテ。結晶化している白い斑点は塩ではなくアミノ酸。まさにうまみの塊で、少量でも味覚とアロマの複雑にして深遠な結びつきを感じさせるパワーを秘めたチーズ。

ヴァン・ジョーヌとコンテ。グルマン垂涎のマリアージュ

Christophe Menozzi(クリストフ・メノジ)さん

Christophe Menozzi(クリストフ・メノジ)さん
旧フランシュ・コンテ地方のジュラ県はもとより、スイスで仕事をしていた時代にも複数の最優秀のタイトルを獲得している、地域きっての敏腕ソムリエ。

ジュラはワインの銘醸地でもあります。地層のパレットのような土壌を生かし、人々は独特の個性をもつワインを造り続けてきました。コンテもジュラワインも同じテロワールの産物。合わないはずがありません。

熟成期間違いの3種のコンテに合うワインを選んでくれたのは、ホテルレストラン「シャトー・デュ・モンジョリ」(下でご紹介します。)のソムリエ、クリストフ・メノジさん。14歳のとき、たまたま口にしたジュラワイン、ヴァン・ジョーヌに衝撃を受けて以来、40年間ジュラワインを探究し続けている第一人者です。

フランスの偉人パスツールゆかりの地でもあるアルボワはジュラワインの中心地。人々の暮らしの風景の中にぶどう畑があり、それより上の標高には牧草地が広がっている。

フランスの偉人パスツールゆかりの地でもあるアルボワはジュラワインの中心地。人々の暮らしの風景の中にぶどう畑があり、それより上の標高には牧草地が広がっている。

クリストフさんが「ジュラワインの帝王」と呼ぶヴァン・ジョーヌ。サヴァニャン種を産膜酵母のもとで6年3か月以上熟成。「クラヴラン」という瓶の形もまた独特。「シャトーシャロン」「レトワール」など4つのアペラシオン(原産地)がある。

クリストフさんが「ジュラワインの帝王」と呼ぶヴァン・ジョーヌ。サヴァニャン種を産膜酵母のもとで6年3か月以上熟成。「クラヴラン」という瓶の形もまた独特。「シャトーシャロン」「レトワール」など4つのアペラシオン(原産地)がある。

彼が白ワインのみを選んだのには理由があります。赤ワインのタンニン分がチーズのプロテインと結びつくと苦味が生じるのに対し、白ワインの酸味はチーズの風味をしなやかに洗練させるのだとか。

若いチーズにはエレガントなシャルドネ種の比重の高いもの、熟成が進んだものには、個性の強いサヴァニャン種の特徴が色濃いワインを合わせました。36か月熟成にはヴァン・ジョーヌを合わせ、「うまみ」を超えた「こく」のマリアージュを楽しみます。

コンテのアロマを表現するには

(1)

(1)乳製品系:ミルクやヨーグルトなどさまざまな乳製品の香り。 
(2)果実系:柑橘やナッツをはじめ、はちみつや花の香り。特にフルーツの香りがしなくても、とてもおいしいコンテのことを伝統的に「フルーティ」と呼ぶ。
(3)ロースト系・スモーク系:火との接触(強火調理、キャラメリゼ、ローストなど)によって発生する香り。
(4)野菜系:野菜や草(干草も含む)、腐植土などの香り。 
(5)動物系:卵黄や皮革、家畜小屋などの動物系の香り。 
(6)スパイス系:バニラ、ナツメグ、こしょうなどのスパイスやハーブの香り。


ワインと同様、コンテにもアロマチャートが存在する。6つのカテゴリーに分類され、本来のアロマの表現は83種にも及ぶが、上のイラストはその抜粋。テイスティングに適したコンテの温度は15~18度で、いただく30分前には冷蔵庫から出しておくのがおすすめ。同じコンテでも温度や合わせるワイン次第で引き出されるアロマが違うのも面白い。

M.O.F.シェフが語るコンテチーズを料理に生かすコツ

Romuald Fassenet(ロミュアルド・ファスネ)さん

Romuald Fassenet(ロミュアルド・ファスネ)さん
ジュラの美食を代表するシェフ。「ボキューズ・ドール」日本チームのコーチを務めたことがあるなど、大の親日家でもある。

TGVの停車駅ドールから車で数分のホテルレストラン「シャトー・デュ・モンジョリ」のコンテのセレクションはさすが本場ならでは。オーナーシェフにして、M.O.F.(フランス国家最優秀職人章)の保持者ロミュアルド・ファスネさんは、それらを料理にも生かします。

手前は、牛乳にコンテを溶かしたソースを添えた、地元の淡水魚と野生アスパラ。春の食材なら長期熟成と短期熟成のコンテ1対2の割合、トリュフなどの食材ならば逆の調合でソースに。奥のブレス産雌鶏に添えたなすのマルムラードにもコンテが入り、下は調理中の写真。なすとしっかり混ぜ合わせることで苦味と甘みの絶妙のバランスが生まれる。

手前は、牛乳にコンテを溶かしたソースを添えた、地元の淡水魚と野生アスパラ。春の食材なら長期熟成と短期熟成のコンテ1対2の割合、トリュフなどの食材ならば逆の調合でソースに。奥のブレス産雌鶏に添えたなすのマルムラードにもコンテが入り、下は調理中の写真。なすとしっかり混ぜ合わせることで苦味と甘みの絶妙のバランスが生まれる。

「調味料を加えていないのにスパイスやうまみを感じさせるような味と香り。色と輝き、脂肪分、食材をつなぐテクスチャーとしての魅力もコンテにはあります」。

ブレス産雌鶏にジュラのワインを使ったソースを添えて。

ブレス産雌鶏にジュラのワインを使ったソースを添えて。

料理によって熟成期間を使い分けたり、熟成違いの2種類を調合したり......。チーズがほかの素材を凌駕してしまうことなく、むしろ持ち味を引き出すことを念頭に置いて使っています。

「コンテには信じられないほどの豊かさがあります。それを知れば知るほど、私はますますコンテに惹きつけられます」。

広大な庭をしたがえた18世紀の邸宅の趣と快適さが共存するレストラン。

広大な庭をしたがえた18世紀の邸宅の趣と快適さが共存するレストラン。

Château du Mont Joly
6 rue du Mont Joly 39100 SAMPANS
URL:https://www.chateaumontjoly.com/

この特集の記事一覧はこちらから>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2024年12月号

家庭画報 2024年12月号

撮影/武田正彦 取材・文/鈴木春恵 通訳/カローリ愛野 取材協力/コンテチーズ生産者協会

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