〔特集〕心洗われる日本の名教会建築 日本中の街や家庭がクリスマス色に彩られる12月。聖夜の本来の意味に心を寄せ、教会建築を訪ねてみたいと思います。静謐で、厳か、そして祈りに満ちた聖なる空間に身を置くと、不思議と心が静まり、洗われるような気がします。災害や紛争が続き、安寧が得がたい今、心の拠り所を祈りの空間に求めます。
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築128年、和洋折衷の畳敷き木造聖堂
カトリック宮津教会(京都・宮津)
ミサが行われる教会としては日本最古の木造カトリック聖堂
木造アーチのこうもり天井、畳敷きが印象的な京都府北部のカトリック宮津教会。日本のカトリック宣教の足跡を知るうえで、非常に重要な教会建築。日本全国にひっそりと佇む美しい教会建築の代表例。2024年1月、「宮津洗者聖若翰(ヨハネ)天主堂」として国の重要文化財に指定された。
聖堂内に足を踏み入れた瞬間、畳に映り込むステンドグラスの神々しい光に心を奪われました。飴色に光った木造アーチ天井、18本の丸柱、木の床は、手入れが隅々まで行き届いていることを感じさせ、建立から128年にわたって、信徒たちによって大切に守られてきたことがわかります。
1896年に建立された宮津カトリック教会は、現役の聖堂としては稀少な畳敷きの教会として知られています。設計はパリ外国宣教会から派遣されたルイ・ルラーブ神父によるもの。
祭儀が執り行われる神聖なる内陣。聖像、台座、天蓋などは、すべてフランスから運ばれてきたもの。
デザイン自体は、西洋のロマネスク様式が踏襲されているものの、畳敷きの会衆席、瓦屋根、ステンドグラスの引き戸、礎石の上にのせた柱、船底を思わせるリブ・ヴォールト天井など、随所に丹後の宮大工や船大工の技が見て取れる土着的(ヴァナキュラー)な「日本の教会建築」となっています。
「神秘的な空間には祈りがある」── トマス頭島 光神父
頭島神父は丹後地方出身だが、長く鹿児島で活動されていたという。
「宗教を問わず、聖堂には、静寂さと暗さが必要です。私たちの教会に神聖さを感じるのは祈りの空気が染み込んでいるからではないでしょうか」とトマス頭島 光神父は語ります。
128年の祈りが詰まった丹後地方の小さな木造聖堂は、その建築的な価値が認められ2024年1月、国の重要文化財に指定。ミサが行われる現役のまま後世に引き継がれていくこととなりました。
和洋折衷の教会には、建築的な見どころがいっぱい
建立当初の畳敷きが継承された会衆席。時代の流れとともに椅子席に改修されたものが多いという。現在、ミサの際はパイプ椅子を並べている。
日本ではこうもり天井とも呼ばれる木造リブ・ヴォールト構造の天井。西洋の建築のボキャブラリーを、北前船の船大工が仕上げたとみられている。地元の丹後産のケヤキを多く使用。
礎石の上に円柱を置くのは宮大工の仕事。建物は18本の丸柱とアーチ型のリブ・ヴォールト構造で支えられている。
日本の教会でも珍しいステンドグラスの引き戸
裏手から見ると聖堂が瓦屋根であることがわかる。隣接する公園には、宮津ゆかりの戦国期のクリスチャン細川ガラシャの像が立つ。
カトリック宮津教会(カトリック丹後教会 宮津教会堂)住所:京都府宮津市宮本500
TEL:0772(22)3127
公開日:月曜・水曜・金曜 13時30分~16時30分
教会行事により見学できない場合がある。
ミサは第2日曜10時~
(次回に続く。
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