〔特集〕心洗われる日本の名教会建築 日本中の街や家庭がクリスマス色に彩られる12月。聖夜の本来の意味に心を寄せ、教会建築を訪ねてみたいと思います。静謐で、厳か、そして祈りに満ちた聖なる空間に身を置くと、不思議と心が静まり、洗われるような気がします。災害や紛争が続き、安寧が得がたい今、心の拠り所を祈りの空間に求めます。
前回の記事はこちら>>・
特集「日本の名教会建築」の記事一覧はこちら>>>
著名人に聞く、心に残る名教会建築
教会建築にはその地の歴史や物語、想いが込められているもの。それらを形にする建築家の方を中心に、弊誌ゆかりの著名人に、国内外で心に残った名教会建築について聞きました。(五十音順)
鈴木秀子さん(聖心会シスター)
一番のおすすめは「
東京カテドラル聖マリア大聖堂」。
1964年竣工。世界的な建築家の丹下健三が設計し、生前ここに眠ることを決めて洗礼を受け、現在遺骨が地下納骨堂に納められている。©東京カテドラル聖マリア大聖堂
世界に名を馳せた丹下健三作品の代表ともいえる建築の一つです。2024年に、献堂60周年を迎えました。日本の建築界に多大な功績を残した偉大な建築家の名作は、60年も前のものとは思えない洗練されたデザインで、今も色褪せることなく人々を魅了し続けています。
地上から見上げるだけだと、キリスト教の教会とは思えない外観ですが、上空から見ると屋根がキリスト教の象徴である「十字架」をかたどっているため、一目でキリスト教の関連施設であることがわかります。
上空から見ると十字架を描く「東京カテドラル聖マリア大聖堂」。©東京カテドラル聖マリア大聖堂
東京カテドラル聖マリア大聖堂住所:東京都文京区関口3-16-15
TEL:03(3941)3029
谷尻 誠さん(SUPPOSE DESIGN OFFICE)
建築を作るうえで、どうすれば自然のように普遍的で美しいものが作ることができるのだろうかとずっと考え続けています。
フィンランドの「
テンペリアウキオ教会」は、自然と人工の調和によって生み出された空間で、環境を生かしきって造られており、とても感動しました。
テンペリアウキオ教会1969年竣工。ヘルシンキ中心部に位置し、天然の岩をくりぬいて造られていて “石の教会” ともいわれる。©Photo_N〈PIXTA〉
田淵 諭さん(大岡山建築設計研究所)
「
ロンシャンの礼拝堂(ノートルダム・デュ・オー礼拝堂)」は、フランスの建築家ル・コルビュジエの設計した有名な礼拝堂。他の直線的なコルビュジエ設計の建物と大きく違い、石膏をこねて造ったような温かなフォルムです。
ロンシャンの礼拝堂1955年竣工、フランス東部に位置する。巨匠ル・コルビュジエの設計で、傑作と評される。©Green〈PIXTA〉
初めて訪れたのは40年ほど前で、冬の夕暮れ時。淡い光を受けたステンドグラスに浮かび出された礼拝堂を体験。その翌朝は快晴で、朝日を受けたステンドグラスの光舞う空間に心が震えました。
4年前は真夏。8月15日のマリア被昇天記念日に訪れました。多くの人々と一緒にミサに参加し、讃美歌と色とりどりのステンドグラスからの光を全身に浴びながら過ごし、世界中の人々に愛される、素晴らしい空間を体験することができました。
そのほか…東京カテドラル聖マリア大聖堂(東京)、中渋谷教会(東京)、香川直島伝道所(香川)、ジュビリー教会(イタリア)