つらくて不安なあなたに伝えたい「私の介護体験」第1回 50代にとって「親の介護」は切実な問題です。ひと足先に介護を経験した方々の気づきや学びが、今まさに直面している人のつらさや、目前に迫っている人の不安を和らげる指針の一つになれば──。そんな願いを込めて一年間、12人の著名人の12通りの介護体験をご紹介します。
「自分のための介護だ」と気づいてから、母の世話が楽しくなりました
新田恵利さん(タレント・女優・作家)
新田恵利(にった・えり)さん 1968年生まれ。85年おニャン子クラブ会員として芸能界デビュー。86年ソロデビュー後、映画、ミュージカルへの出演のほか、エッセイ、小説の執筆を手がける。2014年秋から実母の介護が始まり、認知症サポーターのほかおむつフィッター3級の資格などを取得。23年淑徳大学総合福祉学部客員教授に就任。著書に『悔いなし介護』(主婦の友社)ほか。
母は私のあこがれの存在。全身全霊で介護をしよう
「母とは子どもの頃から仲がよくて、私のあこがれの女性でした。その母が徐々に衰え、いろんなことができなくなり、親子らしい会話が失われていく現実を目の当たりにするのはつらく、寂しかったですね」。そんな思いとも折り合いをつけながら、兄とともに世話をした6年半の介護。「悔いはありません」と振り返る新田さんの表情は明るく、清々しささえ感じられます。
2014年、都内の写真スタジオでひで子さんの生前遺影を撮影した帰りに自宅前で。「メイクをしてきれいになった母を見てとても嬉しかった」。
二世帯住宅で同居する母ひで子さんの介護が突然始まったのは2014年。新田さんは、「母が亡くなったとき、哀しみは減らせないけど後悔は減らせる」と献身的に世話をします。母への人一倍強い思いの背景に、17歳のとき父を病気で亡くした経験がありました。思春期の娘と父の関係は実にあっさりしたもの。「面と向かってゆっくり話したこともないまま急に逝ってしまい、私には後悔しかなかった。だから母にはできる限り親孝行をしてきたつもりです。介護も全身全霊で取り組みました」。
しかし介護は先が見えません。頑張りすぎはストレスとなり、きつい言葉となって相手に向かい、自己嫌悪として自分に返ってくる。葛藤しながら手を抜くコツを覚え、一人で抱え込まない術を身につけていく中で家族全員が介護に慣れていきました。