知っておきたい女性のからだと健康 第1回(2) からだのしくみや加齢による変化を知っておくと健康維持に役立ち、調子が悪くなったときにも早く対応できます。2025年は今のうちに知っておきたいからだの情報、年齢を問わず実践できる健康法やかかるべき診療科についてお伝えします。第1回は排尿の悩みを取り上げます。
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「排尿の悩み」
[お話を伺ったかた]
順天堂大学医学部附属順天堂 東京江東高齢者医療センター 女性泌尿器外来 順天堂大学医学部泌尿器科学 准教授
高澤直子先生たかざわ・なおこ 2004年順天堂大学医学部卒業後、同大学医学部附属順天堂医院での初期研修を経て、06年に同医院泌尿器外科学講座入局。13年に同大学院に入学、翌年米国クリーブランドクリニックフロリダ ウロガイネコロジーにて研修。博士号を取得後、17年に順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センターに赴任して女性泌尿器外来を開設し、担当医を務める。
骨盤底筋の筋力低下でトラブルが起きやすい。排尿習慣や尿の様子はチェックしておきましょう
排尿に関して起こる悩ましい症状としては、頻尿や尿漏れ、尿道口付近のかゆみ、排尿時の痛みなどがあります。
前回記事の“Check!”に挙げた項目に当てはまることがあったら、何かトラブルが起こっている可能性が高いため、泌尿器科を受診します。検診などの尿検査で尿たんぱくが陽性であったとき、腎機能が落ちているとわかったときには、泌尿器科ではなく、腎臓内科で診察を受けます。
筋力低下で腹圧による尿失禁や骨盤臓器脱が起こりやすくなる
加齢によって起こってくる尿漏れや頻尿には女性ホルモンが大きくかかわっています(図)。
女性の年代別起こりやすい病気
作成/高澤直子先生 加齢とともにさまざまな原因によって腹圧性尿失禁や過活動膀胱、骨盤臓器脱が起こりやすくなる。膀胱炎を繰り返すときには何らかの原因が潜んでいることもあり、原因を調べる必要がある。尿道憩室は尿道にできたポケットで、繰り返す膀胱炎の原因にもなる。閉経後尿路関連症候群は女性ホルモンの低下に関連する尿漏れや頻尿、切迫感、腟の乾燥感や灼熱感、性交痛や反復性膀胱炎の総称。
女性ホルモンの減少は骨盤底筋(骨盤の底の恥骨、尾骨、坐骨の間にある筋肉群)の筋力を低下させ、それによって泌尿器や女性器、消化器のような骨盤内の臓器が下がりやすくなると同時に、尿道を締める力が落ちます。そうすると、くしゃみや咳をしたとき、立ち上がったときや走ったとき、笑ったとき、荷物を持ち上げたときなどに尿が漏れることがあります(腹圧性尿失禁)。
妊娠中や出産後に腹圧性尿失禁になる女性もいます。「妊娠に伴う腹圧性尿失禁は、時間が経てば自然に治る人もいますが、症状が続く場合には泌尿器科を受診していただくほうがいいと思います」。
ときには膀胱や尿道、子宮、直腸が腟から飛び出し(骨盤臓器脱)、これが頻尿や尿漏れの原因となることもあります。「外陰部に瘤があるような違和感を覚えたら、泌尿器科か婦人科を受診してください」。
なお、肥満の人、ふだんから便秘で排便時に強く息む人、重い荷物を持つことが多い人は、骨盤底筋の筋力低下が起こりやすく、それが腹圧性尿失禁や骨盤臓器脱を招いている場合もあります。
泌尿器の構造
背中側に2つある腎臓では、血液がろ過されて、1日150~180Lの原尿が作られる。腎臓では原尿から水分やナトリウムなどの電解質、アミノ酸が吸収されて原尿の約100分の1の尿ができる。尿は尿管を通って下腹部の前側(子宮の前)にある膀胱にためられ、膀胱が膨らんだことを脳が感知すると尿意が起こる。尿道や膀胱、子宮、腸といった骨盤内の臓器は恥骨、尾骨、坐骨の間にある骨盤底筋の筋力が落ちると支えが弱って下がる。臓器の低下によって膀胱や尿道が圧迫されて排尿障害が起こりやすくなる。