膀胱が過敏になり、頻尿や尿漏れが起こる過活動膀胱
骨盤底筋の筋力低下は、40代以降に患者が増える過活動膀胱にも関連します。過活動膀胱は、膀胱にたまっている尿が少量であるにもかかわらず、突然強い尿意が起きるもので、頻尿やトイレに間に合わない切迫性尿失禁が主な症状です。脳や脊髄のような神経系の病気や糖尿病などの生活習慣病が原因となることもあるため、診察を受けて、これらの病気がないかを確認することも重要です。
骨盤底筋トレーニングは腹圧性尿失禁や過活動膀胱の治療であり、また予防にもなります。息を吐きながら膣を引き上げるように締める、便やおならを我慢するといった動作を繰り返す訓練で、最初は動画(下の公式サイト)や本などを見て練習してみましょう。
●骨盤底筋トレーニングの動画
一般社団法人 日本理学療法学会連合
日本ウィメンズヘルス・メンズヘルス理学療法研究会
ウィメンズヘルス・メンズヘルス理学療法部門
「骨盤底筋トレーニング動画をyoutubeで公開しています!」
公式サイトで詳しく見る>>新型コロナウイルス感染症の流行を受けて通院を控える人たちに向けて作成された動画。年齢を問わず、尿失禁を予防したい人、改善したい人のための骨盤底筋トレーニングをわかりやすく紹介している。
なお、治療として行う場合、健康保険の適用外で自費診療になります。自己流では正しく実施できていないこともあるので、医師や看護師、理学療法士にトレーニングの指導を受けてみるのもよいでしょう。
便の細菌などによって膀胱炎になることもある
排尿時に痛みがあり、残尿感がある、急に頻尿になった、尿意の切迫感が強くなったなどの場合は、膀胱炎かもしれません。ときには下腹部痛や尿の濁り、血尿を伴います。膀胱炎のような尿路感染症は年代を問わず起こります。「排便した後にトイレットペーパーで便を尿道口に向かって拭き上げると、便に含まれる細菌による尿路感染症を起こしやすくなります。排尿や排便の後は前から後ろに(尿道口から肛門に)向かって拭くという習慣を幼少期に身につけてほしいですね」。また、性行為による感染でも排尿時の痛みや外陰部のかゆみ、しこりといった症状があらわれます。
生理用ナプキンやおりものシート、尿漏れパッドによるかぶれも起こりやすい症状です。まれに帯状疱疹が外陰部に出て痛むこともあります。外陰部の皮膚症状は泌尿器科や婦人科、皮膚科で診てもらいます。
「恥骨から肛門の周囲までのデリケートゾーンは自分で見られませんし、あまり見てはいけないと思っている方も多いかもしれません。でも、自分のからだの一部なのですから、構造を知り、必要に応じてケアしていただきたいですね。特に女性ホルモンの減少によって外陰部の粘膜の萎縮や皮膚の乾燥が起こりやすくなる更年期以降の女性にはケアは重要です」と高澤先生は強調します。デリケートゾーンのケアについては、本連載で今後取り上げる予定です。
男性も加齢で排尿の悩みが増えてくる
「男性の排尿の悩みは、女性とよく似た症状でも原因が異なり、治療法も変わります」と高澤先生。
男性は尿道が長い分、女性のような常在菌による膀胱炎は起こりにくいという特徴があります。
一方で、加齢によって前立腺肥大症になることがあり、進行すると、頻尿、切迫性尿失禁、尿がなかなか出ない、尿のキレが悪い、残尿感があるといった症状があらわれます。膀胱にためられる尿の量が減ってしまい、過活動膀胱を併発することもあるのです。特に風邪薬の服用や深酒がきっかけとなって、急に尿が出なくなり、救急診療が必要となる場合もあります(尿閉)。
脇腹や下腹部が突然激しく痛む尿路結石の男性の発症率は女性の約2倍です。「パートナーの排尿習慣について気になることがあれば、ご自身の泌尿器科の診察時に一緒に受診していただくのもいいと思います」