名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも？知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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千葉（ちば）
都道府県名と同じ名字は、「北海道」「京都」「愛媛」「沖縄」を除いた43都府県が実在します（京都は「みやこ」ならあります）。
このうち、「山口」「福島」などメジャーなものは都府県名とは直接関係ないのですが、「千葉」はそのルーツが千葉県にあります。
ただし、千葉県や千葉市ではなく、千葉市内にかつてあった「千葉」という地名がルーツです。名字の由来となった地名は、大字（おおあざ）や小字（こあざ）といった小さな地名が多いのです。
源平合戦が始まったとき、挙兵した源頼朝は石橋山合戦で平家方に敗れます。舟で安房に逃れた源頼朝主従は、次第に勢力を盛り返して房総半島を北上しました。この過程で頼朝に従った武家のうち、とくに大きな力を持っていたのが千葉常胤（つねたね）です。
この千葉常胤が全国の「千葉」さんの祖とされ、その後も勢力を拡大して今では「千葉」は全国名字ランキング85位というメジャーな名字になりました。
千葉氏のルーツは下総国千葉荘（現在の千葉市）です。桓武平氏の武家で、常胤の父常重が自分の開発した土地を鳥羽天皇に寄進し、自らは千葉介と名乗ったのが祖です。
常胤は頼朝に粛清された上総広常の所領の大半を受け継いだ他、奥州攻めでも活躍して奥州各地に所領を得ました。この他にも、美濃国や肥前国の地頭職も与えられました。
以後、千葉一族は、本拠地の下総の他、陸奥、肥前の合わせて3ヶ所で大きく発展したのです。
とくに陸奥に転じた千葉一族は、現在の岩手県を中心に数多くの分家を出しながら陸奥一帯に広がりました。その多くは陸奥を代表する戦国大名である葛西氏に属し、葛西氏の没落後もそのまま東北各地に土着したのです。
現在でも圧倒的に東北に多く、岩手県では4位、宮城県では6位に入っています。
森岡浩／Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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