名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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菓子(かし)
今日、2月14日はバレンタインデー。直接バレンタインデーに因む名字はありませんが、実は「菓子」という名字があります。
「菓子」は名字ランキングでは2万位以下というかなり珍しい名字で、富山県の射水市にあります。
射水市の新湊地区は名字の世界ではかなり有名な場所です。というのも、合併前の旧新湊市では一番多い名字が「釣」だったのをはじめ、とても独特な名字が多いのです。
新湊は江戸時代北前船で栄えた湊町でした。町には多くの商家が立ち並んでいたのです。こうした商家では、扱っているものを屋号として名乗ります。
明治になって戸籍制度ができた際、屋号を名乗っている商家では、「屋号のまま名字にする」「屋号の屋を谷に変えて名字にする」「屋号から屋をとって名字にする」という3つの方法がとられることが多かったのです。
新湊ではこのうち3番目の「屋をとる」という方法が主流となったため、「糸」「米」「酢」など、扱っていた物の名前そのものの名字がたくさん生まれました。「菓子」もこうしたものの1つで、菓子を扱っていた商家が名乗ったものです。
極めて珍しい名字なのですが、NHKでドラマを制作している有名な演出家に菓子さんがおり、大河ドラマのクレジットなどで見たことがある人もいると思います。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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