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神々が集まる神話の聖地「出雲」へ

2024.12.25

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〔特集〕神々の気配を感じる 聖地・開運の地へ 聖地神の臨在を感じさせる場、神に祈りを捧げる場は、常に霊験あらたか。新しい一年が生まれる正月を機に、心新たに神々のもとを訪ね、深い感謝と祈りを捧げることで開運を祈願します。前回の記事はこちら>>

・特集「聖地・開運の地へ」の記事一覧はこちらから>>

出雲
神々が集まる神話の聖地

【経島── 日御碕神社(島根県出雲市)】写真奥の小さな鳥居と祠のある島は、出雲市大社町の日御碕神社の背後の沖に浮かぶ経島(ふみしま)。約1000年前まで天照大御神(あまてらすおおみかみ)を祀る日沉宮(ひしずみのみや)が鎮座した神域で、現在も禁足地。日本の昼を守る伊勢神宮に対し、日本の夜を守るようにという勅命により祀られたのが日沉宮の始まりという。素盞嗚尊(すさのおのみこと)を祀る神の宮と日沉宮の両本社からなる「日御碕神社」は、「日が沈む聖地の宮」とも呼ばれる。切り立った岩肌が仏教の経巻を重ねたように見えたため経島と名づけられた。
日御碕神社 住所:島根県出雲市大社町日御碕455 TEL:0853(54)5261〉

日本三大聖地に数えられる出雲。日本海に夕日が沈むことから、“日が沈む聖地”ともうたわれています。


「古(いにしえ)より、一日の始まりは2つある。一つは日の出。人間世界の始まりです。もう一つは日の入り。こちらは神々の活動の始まり。日が沈む出雲は、神時間が始まる場所にあるという意味で重要なのです」と出雲大社・権宮司の千家和比古(せんげよしひこ)さんは語ります。

神々が集まり、日が沈む聖地を、神話学者の平藤喜久子教授と訪ねました。

國學院大學教授
平藤喜久子さん(ひらふじ・きくこ)
神話学者。國學院大學神道文化学部教授。神話が日本でどのように読まれ、伝えられ、表現されてきたかを研究している。最近は、カメラを片手に神話の舞台を歩く「神話のフィールドワーク」を行っている。著書に『日本の神様解剖図鑑』など。

国譲りの条件、巨大神殿の痕跡
出雲大社(島根県出雲市)

出雲大社・権宮司の千家和比古さんがお好きだという本殿の背後から平藤さんとツーショット。正面からはうかがい知れない本殿の、高床式の足場まで見える。高さ24メートルで我が国最大級の本殿建築として知られるが、平安時代の文献には、東大寺大仏殿15丈を超える16丈(約48メートル)との記載が残る。

神話の世界とつながる出雲大社

──文・平藤喜久子(神話学者・國學院大學教授)

神々の約束を人間たちが守り伝える空間。出雲大社はそう表すことができるでしょう。

日本の国の成り立ちを語る日本神話。そのなかに、神々の世界が大きく変わる「国譲り神話」があります。天にいる天照大神が、地上を治める大国主神に対し、国を譲るように求めるのですが、この交渉は一筋縄ではいかず、長い年月がかかりました。ようやく話がまとまるとき、大国主神は一つの条件を出します。それは「わたしの住む御殿を、太い柱で天にも届くほど高く壮大なものにして欲しい」というものでした。これにより作られた宮が、大国主神を祀る出雲大社の起源とされています。

早朝、背後の山に、神秘的な朝もやが立ち込める本殿。ご祭神・大国主大神は、日が沈む稲佐の浜のある西側を向いていることが知られ、西側でお参りをする参拝客も多い。

現在の出雲大社本殿の高さは24メートル。「大きな社殿だなぁ」と圧倒され、なるほどこれが大国主神の求めたものかと感じますが、古くは48メートルほどだったといいます。古代にそんな高い建築が可能だったとはとうてい信じられませんでした。ところが平成12年から13年にかけて行われた境内の発掘で、直径が3メートルにもなる巨大な柱が発見されます。このニュースは当時大きく報道され、わたしも胸を躍らせました。この太さの柱であれば、48メートルの高さも十分にあり得るものだったからです。

出雲大社・権宮司の千家和比古(せんげよしひこ)さんも、柱の穴の跡でも見つかればと思っていたところに、柱そのものが出土し、驚かれたといいます。伝承が事実であった可能性が高まり、大変うれしかったそうです。

【神話と歴史をつないだ巨大柱の発掘】2000(平成12)年に境内の八足門付近から出土した鎌倉時代前期のものと推定される心御柱(しんのみはしら)は、出雲大社宝物殿にて実物を展示。巨大な丸木3本を結束して1本の柱建てとする建築史上類を見ない工法は、想像図とも疑われていた出雲国造(こくそう)の千家家(せんげけ)に伝わる古図「金輪御造営差図(かなわのごぞうえいさしず)」と合致。大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)の国譲りの条件とされた出雲の巨大神殿は、神話の世界の話とみる向きもあったが、高層神殿の実在性を物語る物的証拠となった。

【神話と歴史をつないだ巨大柱の発掘】巨大柱の発見場所を示す石畳。平藤さんおすすめの場所。

古くからの社殿がそのままの姿で残ったわけではありません。先人たちが、そのとき持てる力と知恵を使い、社殿の造営や修復を繰り返し、現在の姿になりました。千家さんは、出雲ではそのときどきの人々がどのように神に仕えるのがよいかを考え、最善の力を尽くしてきたのだといいます。

いま目の前に立つ社殿、そして地中から現れ出た巨大な柱。出雲大社を訪れるたび、遙か遠い昔から神々の約束を守り伝えようとしてきた人間たちの思いに心を打たれます。

出雲大社
住所:島根県出雲市大社町杵築東195
TEL:0853(53)3100
参拝時間:6時~19時

出雲の神話性を伝える古代出雲歴史博物館

出雲大社に隣接する古代出雲歴史博物館には、平安時代の出雲大社本殿の10分の1復元模型(上)が展示されている。

358本の銅剣

358本の銅剣

また、古代出雲の権勢と繁栄を裏づけることとなった1984年荒神谷遺跡で発掘された2000年前の大量の青銅器を展示。日本最多の発掘量である358本の銅剣すべてが一堂に会する展示は圧巻。

出雲は神話と歴史が交錯する特別な聖なる地であったことを改めて感じさせる博物館。

古代出雲歴史博物館
住所:島根県出雲市大社町杵築東99-4
TEL:0853(53)8600
開館時間:9時~17時(3月~10月は18時まで)
休館日:第1・第3火曜

(次回へ続く。この特集の記事一覧はこちらから>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2025年01月号

家庭画報 2025年01月号

撮影/本誌・坂本正行 取材協力/島根県観光連盟 ●特集内の表記、ふりがなは各神社、著者の指定に準じます。

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