藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。
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1月の花「アカシア」
リビングに飾るブーケのオーダーをいただき、金葉(きんよう)アカシア‘ツトム’とアカシア‘さきがけ’をたっぷり使い、アクセントにスイートピー‘めぐみ’を加えたシンプルなブーケを制作。この作品をSNSにアップしたことがきっかけで、‘ツトム’を生産する「國司グリーン」さんと、‘さきがけ’の生産者「株式会社伴右衛門」さんの交流が始まり、お二人でアカシア談義をされているそうです。
花だけでなく、アカシアの魅力的な葉にご注目を!
年があけて初めての今回は、これからどんどん国産ものが出回るアカシアにスポットを当てます。2022年3月の配信ではミモザを紹介しましたが、ミモザとは銀葉(ぎんよう)アカシアや房アカシアなど黄色の花が房状に咲くアカシアを総称した英語、またはフランス語の呼び方です。ボール状の花が集まった花房は輝くように美しく、私もこれからの時期の贈り花によく利用します。今回は1月から出回り始める個性的なアカシアをピックアップします。
まずは新年のおめでたい気分にふさわしい金葉のアカシアから。
金葉アカシア‘ツトム’の深みのある黄葉はまさにゴールドで、金葉の名前にふさわしい!生産者が増え、2024年夏に「周防大島花木生産組合」という組合を作られたそうで、今年からは生産量も安定して入手しやすくなると期待しています。
アカシアというとシルバーがかったシックな葉色が思い浮かぶので、金葉の‘ツトム’という品種を初めて見たときには驚きました。深みがある黄色はゴールドと呼ぶにふさわしく、気品とゴージャス感のある金葉だと感じました。
この品種は山口県大島郡の周防大島町でミカン栽培をしている「國司グリーン」さんが生産しています。特産のミカンの木を強風から守るために植えられたアカシアから突然変異で生まれたものだそうで、それを見つけた故・安村務さんの名にちなんで命名されました。
先端がふさふさしているので、花のようにアクセントとして使えるのが魅力で、贈り花に加えると、軽やかながら存在感を示します。どんな花とも合わせやすく、それでいて個性的な雰囲気をもたらしてくれるのがとても気に入り、1月中旬からの出荷を毎年心待ちにしています。
もう一つ、お気に入りでよく利用しているのが、国産のアカシアの‘さきがけ’で、名前どおりどこよりも早く出回ります。
国産では一番早く出回るアカシア‘さきがけ’をアップでどうぞ。蕾から徐々に全開してもこもこになる様子がとてもキュート。繊細で小さな葉もかわいらしい!
生産者は和歌山県有田郡の花農家「株式会社伴右衛門」さん。温室での促成栽培ですが、出荷時の状態がじつに絶妙なのです。ミモザは全開してもこもこになるとすぐに茶色くなってしまいます。その点‘さきがけ’は蕾が混じり、花の丸い形がしっかりわかる状態で出荷されるので、花もちがよく、安心して贈り花に利用できるのです。いち早く春の雰囲気の作品が作れるのも‘さきがけ’のおかげだと感謝しています。
アカシアは黄色の花だけでなく、オジギソウに似た繊細な形状の葉も個性的で、しかも小さな葉の集合体なので、サイズがこぶりなアレンジに加えて奥行き感を出すこともできます。蕾がいっぱいついた状態もかわいらしく、本当に魅力的な枝ものだと感じています。
アカシアを使ったブーケ&アレンジメント
長野県で暮らすお母様に還暦を祝う贈り花を。ピンクのバラ‘リメンブランス’と薄紫のバラ‘ライラッククラシック’を合わせ、花と花の間に金葉アカシア‘ツトム’を入れました。ぱっと見るとゴールドの葉が花のようにも見えるところがこのアカシアの魅力。ほかにスイートピー‘めぐみ’、ラナンキュラス‘ひらひら’も加えました。
‘シャルロットレッド’と‘ブラックジャック’。2種のラナンキュラスにチューリップ‘レッツダンス’、カーネーション‘レージェマロン’、スイートピー‘めぐみ’を加えた春を感じさせるブーケ。全体に散らした金葉アカシア‘ツトム’が華やかな花色をまとめてくれます。
優しいパステルカラーのアレンジでも、繊細な葉の金葉アカシアが活躍。バラ‘シフォンベール’、ラナンキュラスの‘リナ ドレス’と‘ちほの恋’、スイートピー‘めぐみ’、花が小さなカーネーション‘ミニティアラ ミルク’を合わせ、金葉アカシア‘ツトム’とタラスピオファリムを花と花のすき間を埋めるように加えました。