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時代を経て愛されるボンボニエール──デザインに込められた慶びの心

2025.01.09

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遊び心が感じられるユニークなデザイン

ボンボニエールのデザインは自由。皇室ゆかりの品というと装束や有職文様のような伝統的でオーソドックスなものが思い浮かびます。ボンボニエールも御即位の際のものは、大嘗祭などに使われる、いにしえの儀礼の器物をかたどったものが多いのも確かです。でもそれさえも可愛らしい。それは手のひらの上にのるミニチュア感のなせる業でしょう。

そうなると何でもミニチュアにしてみたくなったのか、牛車や駕籠、船に飛行機といった大きなものから、鳥籠、洋書など小さなもの、はては戦車や砲弾までボンボニエールになりました。お約束は「どこかにお菓子が入ること」。ボンボニエールは菓子器なのです。

駕籠形と牛車形


和船形

鳥籠形

洋書形

諫鼓鶏(かんこどり)形

鎧兜形

八景釜形青海波文

瀟湘(しょうしょう)八景を側面に配したこのボンボニエールは、大正6(1917)年5月11日に行われた公爵島津忠重邸新築の祝宴で配られたもの。島津忠重は島津氏第30代当主。源頼朝から家祖の島津忠久に授けられた家宝八景釜を忠実に模している。

卵形重杯

ユニークなデザインには、皇后や皇族妃方のアイディアが反映されたものが多くあります。ボンボニエールを取り交ぜて下賜する際の種類、選択も皇后がなさいました。こういった高貴な方々の遊び心が感じられることも、ボンボニエールに心揺さぶられる理由なのかもしれません。

手のひらサイズとはいえ、皇室や華族家から制作依頼されたもの。職人たちは手を抜きません。ミニチュアに精魂込めて技巧を凝らしています。

外国の賓客に贈られたボンボニエールは海を渡り、日本の伝統文化と工芸技術を広めることに一役買いました。ボンボニエールは掌上の外交官でもあったのです。

【パトロネージュが生んだユニークな逸品】

大正4(1915)年から、皇室ではあらかじめボンボニエールを何種類か作り置きしておくようになった。外国の賓客を招いての宮中午餐などの際には、このボンボニエールの中から数種類を選び贈り物にした。いずれも日本特有の意匠・形状であり、その伝統工芸技術を外国にPRする役割を担った。

鳩に地球儀形 皇太子外国御訪問御帰国記念晩餐
大正10(1921)年9月15日

大正10年3月に19歳の皇太子裕仁親王(昭和天皇)は御外遊に出立された。世界を見聞し、見識を身につけ、9月3日に御帰国。御帰国祝賀饗宴の際には鳩に地球儀形ボンボニエールが下賜された。鳩3羽が地球を支えるモチーフは第一次世界大戦後の世界平和への願いが込められている。

※作品名の下に記載されているのは、ボンボニエールが下賜された年月日です。

文/長佐古美奈子(霞会館記念学習院ミュージアム学芸員) 撮影/鈴木一彦

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