「亡き猫を想い号泣。“うつ” から回復するきっかけに」── 高尾美穂
医師 高尾美穂さん(たかお・みほ)愛知県生まれ。女性のための統合ヘルスクリニック イーク表参道 副院長。「はるうらら」代表。産婦人科専門医、医学博士、婦人科スポーツドクター。講義やイベント、ワークショップ開催など幅広く活動。著書に『いちばん親切な更年期の教科書』(世界文化社)など多数。
救い
とにかく本の多い家で育ち、幼少期からたくさんの本に囲まれて育ったという高尾美穂さん。普段から多くの本を読まれているそうですが、大人になった今も、“頭の中を占めていることを違うことに置き換えたいとき” は、絵本を開くことが多いといいます。
「絵本は言葉が少ない分、頭で難しく考えなくても絵からダイレクトに心に入ってくるものがある。しかも、そのメッセージは読み手の想像に委ねられているので、自分の感じたいように受け取ることもできる。だから、ちょっと疲れているなと感じるときに絵本を読むと、すごく心が楽になるんですよね」。
実は、少し前に愛猫とのお別れがあったという高尾さん。
「こういう状態が “うつ” なんだと感じるほど落ち込みましたが、たまたまそのとき、友人の家で『100万回生きたねこ』を手にする機会があって。何度か読んだことはあったのですが、そのとき初めて号泣しました」。
それをきっかけに、少しずつ愛猫との別れを受け入れられるようになったといいます。読む人の心に寄り添う ── 絵本は大人にとって、そんなやさしい存在なのでしょう。
©JIROCHO, Inc. /KODANSHA
『100万回生きたねこ』作・絵/佐野洋子 講談社 1650円
100万回死んで、100万回生きたねこが、100万回目の人生で運命の相手に出会い、初めて愛や悲しみの意味を知る物語。読むたびに印象が変わる、読む人によっても受け取るメッセージが変わる、そんな作品であるからこそ、子どもの心以上に大人の心をつかむ作品なのかもしれません。
〈私の髪型のモデル “タンタン”〉
『タンタンの冒険』シリーズ作・絵/エルジェ 訳/川口恵子 福音館書店 各1760円
元新聞記者のベルギーの漫画家が綿密な取材をもとに描く全24作の冒険漫画。少年タンタンと相棒の愛犬スノーウィが、世界中の旅先で事件に巻き込まれます。「この作品に漂うおしゃれな雰囲気が好き。特にニッカボッカーズを身につけたタンタンのファッションが気に入っています」(高尾さん)。
〈赤羽末吉さんの圧巻の画力〉
『スーホの白い馬』再話/大塚勇三 絵/赤羽末吉 福音館書店 1540円
発刊から50年以上にわたり多くの子どもたちに読み継がれてきた赤羽末吉氏の名作。「色の対比が美しく、ダイナミックな構図の絵が好きで、赤羽さんの絵本はすべて持っていた」という高尾さん。モンゴルの民族楽器「馬頭琴」の由来となった、悲しくも切ない、青年スーホと白馬の絆を描く物語。
(次回に続く。
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