〔特集〕美味が待つ冬の湯宿へ 日本人の冬の旅の原点──それは、大地から湧き出る温泉に浸かって心身を整え、日本各地に産する美味に舌鼓を打つこと。非日常を感じながらも快適に滞在できて、その土地が誇る自慢の料理に出合える温泉宿を、厳選してお届けします。
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福井に根付く食と文化を発信するオーベルジュが誕生
歓宿縁 ESHIKOTO(かんしゅくえん えしこと)【福井 永平寺禅温泉】
客室すべてに、温泉が楽しめる半露天風呂を設置。炭酸水素塩泉の湯は、さっぱりとした清涼感が得られる
曹洞宗の大本山・永平寺のお膝元の地に黒龍酒造が手がける複合施設「エシコト」が開業したのは2022年のこと。そして2024年11月、隣接地にかねてから計画が進められていたオーベルジュが誕生しました。
「歓宿縁」とは、またとない縁を歓ぶという意味で、酒と食とで人と人とのご縁を繫げ、福井をはじめ、北陸に根づいた食と文化をこの地で発信していきたいという思いが込められています。
浄法寺山から九頭竜川へと流れ込む伏流水をモチーフに設計。冬は雪景色、春は桜など、折々の風景が広がる。
福井名水サーモン、へしこなど地素材を使った宿泊客専用朝食は、「Apéro&Pâtisserie acoya(アペロ パティスリー アコヤ)」にて。
レストラン隣の「Bar 刻(とき)」では、黒龍酒造の吟醸酒とフルーツ、抹茶を組み合わせたカクテルも楽しめる。
独立した8棟の客室は陶芸家・造形作家の内田鋼一氏が監修。棚田だった地形を生かし、黒を基調としたシックな佇まいが印象的です。すべての部屋に半露天のスタイリッシュな石風呂を備えています。
内田鋼一氏による加彩大壺。ほかにも、氏が収集した骨董やプリミティブアートが部屋に飾られる。
白が基調の「ZEN I」の部屋には、ガラス作家・辻 和美さんのシャンデリアなど現代作家のアートが並ぶ。ソファなどは「ザ・コンランショップ」がセレクト。
民藝、李朝、アールデコ、福井のアート・工芸など、部屋ごとにテーマが異なり、自分好みの部屋を選んで滞在できます。座ったときの目線で設けられた窓からは、山里の風景と九頭竜川を眺め、どこにいても自然と一体となれる心地よさ。心が癒やされます。
和洋の多彩なスタイルで越前蟹を堪能
オーベルジュ滞在のメインとなるのが美味なる料理。宿には福井県各地から評判の高い和洋の料理人が集結しています。
日本料理「えん」
純米酒をアルコールが残るぎりぎりの温度まで温め、蟹刺しをしゃぶしゃぶして食す。蟹みそたっぷりのたれにつければ、ふくよかな日本酒と濃厚な蟹のうまみが口いっぱいに広がる。
『ミシュランガイド北陸2021特別版』で1つ星として掲載された日本料理「えん」は、開業に合わせて街中から移転し、献立も再構築。
せいこ蟹。甲羅に漆を塗ったふたにも注目。両レストランともに、せいこ蟹の提供は1月上旬まで。
ベシャメルソースで仕立てた蟹グラタン。
「実家が越前港近くの魚屋ということもあって、魚介や越前蟹の扱いは得意です」と話す店主の小松辰平さん。せいこ蟹の塩辛をかけた茶碗蒸しや日本酒しゃぶしゃぶなど、ひと技利かせた料理をカウンターで臨場感たっぷりに振る舞います。
フランス料理「cadre(カードル)」
地元の海女さんから仕入れた天草で作ったところてんに、すももビネガー、マイクロフェンネル、せいこ蟹を取り合わせた前菜。スパークリング日本酒「ESHIKOTO AWA」と合わせて。
もう一店舗は、フレンチの「カードル」。静岡出身の濱屋拓巳シェフが移住後、生産者を訪ねて見つけた地素材を使って美しいフランス料理で表現します。
勝山にあるラブリー牧場のジャージー牛サーロインと若狭牛イチボ。池田町のクレソンと菊芋ペーストを添えて。
三国沖でとれた濃厚なうまみの甘えびにモッツァレラチーズのババロア、発酵トマトを組み合わせた一品。
「福井は食材の宝庫。監修している朝食でも存分に味わってください」と濱屋さんは話します。レストランは1か所で日本料理が週5日、フレンチが週2日ほど入れ替わりで営業。連泊しながら部屋も料理も趣向を変えて過ごすことができます。
山の懐に抱かれるように立地する8棟のオーベルジュ。
歓宿縁 ESHIKOTO住所:福井県吉田郡永平寺町下浄法寺10-15-1
TEL:0776(50)1323
基本料金:1室2名利用で1泊2食付き1名7万円~ 「日本料理 えん」皇室献上蟹コースは同14万9000円~ 蟹は3月20日まで 全8室 IN15時/OUT11時 中学生以上利用可 「日本料理 えん」、「cadre」は日によって営業日が異なる
(次回へ続く。
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