〔特集〕美味が待つ冬の湯宿へ 日本人の冬の旅の原点──それは、大地から湧き出る温泉に浸かって心身を整え、日本各地に産する美味に舌鼓を打つこと。非日常を感じながらも快適に滞在できて、その土地が誇る自慢の料理に出合える温泉宿を、厳選してお届けします。
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冬の口福“ふく”が待つ由緒ある温泉地へ
別邸 音信(べってい おとずれ)【山口 長門湯本温泉】
開湯600年の歴史を持つ長門湯本温泉の泉質はアルカリ性単純温泉。大浴場と客室の露天風呂で、肌がすべすべになる湯を堪能したい。
「深川萩」の器とともに、天然ふぐを贅沢に味わう
冬の味覚・ふぐの名産地といえば、山口県。近海で良質なふぐがとれるほか、ふぐ取扱量全国1位を誇る下関市の「南風泊(はえどまり)市場」を筆頭に、新鮮なふぐが集まる市場が多数あり、宿や料理店は自慢のふぐ料理で食通を唸らせています。
「別邸 音信」の「ふく刺し」。料理人の巧みな包丁さばきから生まれる「菊盛り」は芸術的な美しさ。箸をつけるのがためらわれるほど。
長門湯本温泉の「別邸 音信」もそうした宿の一つ。例年10月~3月の期間限定で「天然ふぐのフルコース」を提供しています。
山口県の人がふぐを“ふく”と呼ぶ理由には諸説ありますが、「福」を連想させる響きもその一つだそう。
深川萩の器とふぐ料理が調和した「天然ふぐのフルコース」。右・橙のエキス入りのたれに漬け込んで焼き、萩のごまがらをまぶした「ふくだいだい焼き」。片口皿は田原陶兵衛窯の作。左・「白子昆布舟蒸し」の丸皿と酒器は、ともに10代坂倉善右衛門氏の作。
深川萩の器とふぐ料理が調和した「天然ふぐのフルコース」。先付の「みかわ湯引き」(右)の小皿は坂倉正紘氏、「てっぴとはなっこりー(長門名産の野菜)チリ酢和え」の割山椒は14代新庄貞嗣氏の作。
「このコースは身の締まった歯ごたえのある天然のふぐをお一人様一匹召し上がっていただく大変贅沢なものです」と説明するのは武田純一料理長。その言葉どおり、ふぐの皮の湯引きを用いた先付に始まり、蒸し物、お造り、焼き物、揚げ物、鍋、締めの雑炊まで、ふぐ三昧の豪華なディナーです。
客室は全7タイプで、写真の「Dタイプ」は別荘感覚で過ごせるメゾネットタイプのスイートルーム。5名まで利用可能。
すべての客室が源泉かけ流しの露天風呂付きで、湯船は大理石、陶器、ひのきの3種類。「Dタイプ」の3室は湯浴みをしながら山の眺望が楽しめる。
京都の高台寺茶室「傘亭」を模した屋根が美しい「寄り付きホール」。庭と屋内を仕切るものがなく、木漏れ日やそよ風、雨の音がひときわ心地よく感じられる。
また、料理と引き立て合う深川萩(ふかわはぎ)の器もご馳走の一部。深川萩は宿から程近い深川三ノ瀬(そうのせ)の集落で360年以上作り続けられている萩焼で、現在は5つの窯元がその歴史を守っています。
近年、宿と窯元の交流が盛んになったことから、器と料理の取り合わせの妙が楽しめるように。旬の天然ふぐとともに、ぜひ、深川萩の器も味わってください。
別邸 音信住所:山口県長門市深川湯本2208
TEL:0837(25)3377
基本料金:1室2名利用で1泊2食付き1名4万4300円~ ご紹介した「Dタイプ」は同6万6300円~(天然ふぐのフルコースプランは同10万5900円~。除外日あり。1週間前に要予約) 全18室 IN14時/OUT11時
(次回へ続く。
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