「こんな風景、日本でもイギリスでも今まで見たことがない!」
毎年4万球も植え付けるというチューリップは、ボリューム的にも圧倒的な存在感を示す主役です。にもかかわらず、とてもナチュラルでほかの草花や花木と美しいハーモニーを奏でているのです。あまりに新鮮で魅力的な景色に夢見心地になり、言葉も出なかった覚えがあります。
4月下旬に開花するビバーナム‘カルセファーラム’のボール状に集まる白花と、チューリップの白、ピンクの花色合わせがとても愛らしい景色を生み出す。チューリップと花木の組み合わせから生まれるスケールの大きな景色
群馬県「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」のチューリップの景色には大きな特徴があります。
それはちょうど同じ時期に咲く花木との組み合わせ。たとえば白花がボール状に咲くビバーナムや繊細な白い花を咲かせるジューンベリー、そして鮮やかなマゼンタの花が枝を埋め尽くすキクモモ。
地面を彩るチューリップから美しい花木へ、視線が自然に上がるから、視野が広がってよりスケールの大きな風景が生まれるのです。
さまざまな花木の開花時期に、その下に植えたチューリップが咲くように、チューリップの品種選びも考えられていて、自然に見えながらじつはちゃんと計算されて生み出された景色なのだと感心します。
「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」には魅力的な花木がたくさん植えられていますが、オープンから16年を経てどの花木も充実し、とても花付きがよい樹姿が楽しめます。
チューリップと花木の美しいコラボレーションは、園路のあちこちで見られるので、ぜひその魅力をご堪能ください。お気に入りの組み合わせを見つけたら、ご自宅の庭でマネしてみるのもおすすめです。
4月中旬から繊細な白花を咲かせるジューンベリーは、まるでカスミソウのブーケのようにふんわりと優しい印象。その下に濃淡オレンジ色のチューリップが咲く、ナチュラルながら元気のよさを感じさせる景色も魅力的。チューリップガーデンが美しく個性的なもうひとつの理由は?
さて、群馬県「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」のチューリップの景色が美しいのにはもうひとつ理由があります。
「チューリップって花が咲くときはまだ葉が小さくて地面の茶色が見えちゃうんですよね。花色と花色の間に茶色が混じると、視野を広く見たときの美しさがどうしても損なわれるんです」と、この庭のヘッドガーデナーさん。
足元を埋める個性的なグランドカバー
そのマイナス要因を改善する工夫が、チューリップの足元を埋めるグランドカバーです。
花期の長いパンジーやビオラとの組み合わせはよく見かけますが、この庭ではそのグランドカバーもとても個性的。
広いスペースでは黄緑がかった黄色の小花がふんわり咲くユーフォルビア キパリッシアスがグランドカバーに使われていたり、チューリップの花色に合わせてシックな葉色のヒューケラが使われていたり、また、フレッシュな葉色のクサソテツとの意表を突いたコーディネートに驚かされたり。
ここで見つけるいくつもの個性的なグランドカバーが、オリジナリティ溢れる景色を生み出しているのだな、といつも感心しています。
毎年、晩秋から冬にかけて、スタッフ総出で球根を植え付けるそうですが、開花時期には、花色や草丈、花のサイズなどをすべてチェックするのだそうです。
次の春にはどのチューリップを植えるか、常に先のシーズンの計画を描き持つことは、ガーデナーの大切な仕事だそうです。
そんなガーデナーさんたちの努力の結晶ともいえる美しい景色を堪能しに、ぜひ群馬「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」を訪ねてみてください。感動ものの景色が待っていますよ。