緊張に打ち勝ち、SP、FSともに見事な演技を披露した友野一希選手(日本)。写真/エンリコ/アフロスポーツ3、友野一希選手(日本)
FS「ウエスト・サイド・ストーリー」173.50点3位(SP82.61点11位、トータル256.11点5位)
今回のワールドをご覧になった日本のフィギュアスケートファンが一番涙腺を刺激されたのは、もしかしたら宇野選手と並んで、友野一希選手の演技だったかもしれませんね。
今シーズンからシニアに参戦したばかりの19歳。もちろん国際大会に出たい気持ちは常に持っていたにしても、羽生選手が怪我のため欠場、そして無良崇人選手の現役引退を受けて回ってきた初のワールド出場。
しかも、宇野選手、田中刑事選手、友野選手のなかで成績上位2選手のうち、1選手の成績が2位以上であるか、2名の合計順位が13位以上になれば、来シーズンの国際大会の出場枠取りを3枠のまま維持できるという使命が課せられていました。
さらに試合直前の20日、頼みの綱の宇野選手をまさかのアクシデントが襲います。右足甲を痛めて歩くこともままならない様子の宇野選手の姿を見て、「これは……2枠になっても仕方ない」と思い始めたそのときに。
友野選手がやってくれました!
SPの好演で11位につけたあとも緊張の糸を切らすことなく、FSでさらにハイレベルな演技を披露。
4回転サルコウを2本、トリプルアクセルも2本跳ぶ難易度の高い構成ながら、ほぼノーミスの出来でした。
スピンやステップなど、ジャンプ以外のエレメンツでもひとつひとつ丁寧に指先まで神経を行き届かせた演技に、会場もヒートアップ。
大きな声援を後押しに、今大会のSP、FS、トータルスコアすべてでPBを更新。結果、3枠確保に大きく貢献しました。
どれだけの重圧だったことでしょう。SPをノーミスで滑りきったあと、堰を切ったように涙を流す姿がすべてを物語っていました。
フリーでも実力を出し切り、最終グループが始まる前の時点では、フリーで暫定1位、トータルでも2位! 激戦の最終グループで滑る宇野選手の負担を軽くできたことは、本当に大きな意味があったと思います。
世界中のフィギュアスケートファンに名前を覚えてもらえましたね。
緩急のついた演技で観客を魅了した友野選手、今後のさらなる成長に期待です。