男を上げた宇野昌磨選手(日本)。右足甲の痛みに耐え、最後まで滑りきりました。写真/エンリコ/アフロスポーツ4、宇野昌磨選手(日本)
FS「トゥーランドット」179.51 点2位(SP94.26点5位、トータル273.77点2位)
オリンピックで見事、羽生選手とワン・ツー・フィニッシュを飾った宇野選手。
今大会ではネイサン・チェン選手とともに金メダルの筆頭候補に挙げられていましたが、五輪後に新調した靴が合わずに右足甲を痛めてしまい、まさかの展開に。
ジャンプの踏み切り、着氷、エッジづかい、そのすべてを繊細にコントロールしなければならないフィギュアスケートにおいて、足を怪我するダメージは深刻です。
痛み止めの注射を打って臨んだSPでは、ジャンプでバランスを崩したものの、失敗を引きずることなく、なんとかまとめあげて5位につけました。
リンクから出ると片足を引きずって歩いていましたから、滑るだけでも精一杯だったはず……。それでも宇野選手は「攻める」気持ちを捨てませんでした。
SP演技後に、「出場枠のこともありますし、フリーでは攻めていきたい。もともとの構成を最後まで諦めません」と語ったその引き締まった表情に、
『家庭画報』1月号の宇野選手特集で取材させていただいたときに山田満知子コーチが言っていらした、「昌磨の真面目さと努力家であるところは抜きん出ているんです。“素敵!”と思っています(笑)」の言葉を思い出していました。
そして迎えたFS。
滑り出しの4回転ループ、4回転フリップで転倒し、4回転トウループでもこらえきれず失敗。それでも心は折れていませんでした。
丁寧にしっかりと演じ、スピンではレベル4の高評価を獲得。そして構成内容を変更した後半、4回転トウループ-2回転トウループ、トリプルアクセル-1回転ループ-3回転フリップ、3回転サルコウ-3回転トウループの怒濤の3連続ジャンプで加点をもらう出来映え。
転んでも転んでも諦めず、最後まで滑り続ける姿は氷上でひときわ大きく見えました。
終った瞬間、リンク上で感極まって涙した宇野選手。
点数が出た後で、樋口美穂子コーチに最初にかけた言葉が「3枠大丈夫?」だったなんて、泣かせてくれます。
その強い気持ちがあったからこそ、力を出し切れなかった選手が続出した最終グループにおいて、見事銀メダルの結果につながったのだと思います。
五輪後、マイペースで天然な部分が強調される傾向がありましたが、真のアスリートの姿あっての、愛らしさですから。
改めてリスペクトの念が湧いてきました。今後は焦らず治療に専念して、元気な滑りを見せてくれることを願っています。
まだまだあります。
心に響いた世界選手権での演技。
羽生選手、ハビエル・フェルナンデス選手、パトリック・チャン選手などオリンピックで魅了してくれた選手たちの姿をワールドで見られなかったことは残念でしたが、今シーズンの締めにふさわしい、心に残る演技も数多くありました。
見事、オリンピックの雪辱を果たし、FSの世界歴代3位の高得点で圧勝したネイサン・チェン選手(アメリカ)、同じく平昌五輪では力を発揮できず、自国で酷評を受けたともいわれるミハイル・コリヤダ選手(ロシア)は滑らかで美しいスケーティングを披露し3位に。
4回転を跳ばない構成ながら、観客を魅了し、癒しの世界へ誘ってくれたミーシャ・ジー選手(ウズベキスタン)、長い手足をフルにいかしてダイナミックに、優雅に演じてくれたデニス・ヴァシリエフス選手(ラトビア)など、心に響いた選手を挙げだしたら、きりがありません(笑)。
オリンピックの疲れを抱えながら、日本の3枠取りに貢献した宮原知子選手、田中刑事選手にも拍手を送ります。
また、来シーズン素敵な演技に出会えることを楽しみに!