病院でマンツーマンで中学校の授業を受けた
小児がん患者は入院や在宅療養のために学校に通えなくなることが多く、学習が中断されてしまいます。子どもたちが、学校に行けない、勉強ができない、友達に会えないという状態に怒りや抑うつ、不安を感じ、無力感や喪失感を持つこともよくあります。
学習の機会を持つことは、小児がんの子どもや保護者には、学力の維持のためだけでなく、日常が続いているという安心感につながります。
病気の子どもたちに対しては、病院内に設置されている特別支援学校(本校・分校・ 分教室)や特別支援学級で勉強する、あるいは教師が病院や自宅を訪問する仕組みが整備されています。主治医の許可や、原則として病院にある学校への転籍が必要で、退院後は前籍校へ復帰します。
林さんも入院した国立大阪病院(現・国立病院機構大阪医療センター)で大阪市立貝塚養護学校(現在は閉校)の訪問教育を受けました。「主要5教科の先生が体調のいいときに病院に来てくださって、マンツーマンで授業を受けました。確認テストもありました」(林さん)。
このような教育に関する情報は、都道府県や市町村の教育委員会のほか、小児がん拠点病院やがん診療連携拠点病院のがん相談支援センター、あるいは各病院のソーシャルワーカーが持っています。
ただし、院内学級を持つ病院はまだまだ少ないのが現状です(学校のリストは、国立がん研究センター 小児がん情報サービスの「病院にある学校について」が参考になります。
「小児がん情報サービス」病院にある学校についてhttps://ganjoho.jp/child/support/school/school.htmlまた、高校教育も受験や受け入れなどに壁があるのが実情です。林さんは、母親の朝恵さんが数校を回った結果、病院で受験できる府立登美丘高校を選び、受験して合格しました。
「肩の手術で私学は受験できませんでした。当日はギプスを巻き、点滴を受けながら、高校から来られた試験監督の先生3名に囲まれての受験でした。左肩を動かせず、答案用紙を押さえられないため、消しゴムがうまく使えなくて困りました」と林さんは振り返ります。
「入院中は家族が揃って楽しく過ごせる時間がなかった。メイク・ア・ウィッシュの支援による米国旅行はほんとうに夢のようでした」
取材・文/小島あゆみ 撮影/八田政玄
写真提供/1.メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン、2〜3.林 祐樹さん
「家庭画報」2018年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。