岸谷さんに「今後の演劇界を背負うであろう逸材」と、絶賛された新田さん。4か月にわたる公演期間中にさらに成長を遂げそうだ。――真剣佑さんの役柄はどういったものなのでしょう?
新田「アトラスという名前です。とてもエネルギーを持った若い男の子なんですけれども、ほかの登場人物と同じように、彼もとんでもない過去を背負いながら生きている。実は僕、ここにきて、どう演じていいか迷ってます。3日ぐらい前から急に不安になってしまって」
岸谷「難しい役だからね。アトラスは、ある過酷な環境の中で生きてこなければならなかった、心がバラバラな少年で、まだ自己というものが固まっていない。そんな彼が島で色々な大人達と出会い、様々なことを感じながら成長していく物語が、『ZEROTOPIA』の一つの柱になっているんだけれども、その成長の足りない部分を、地球ゴージャス流のコメディで表現していたりするから」
新田「難しいです、本当に。僕の中では、人格が3つある役だと捉えているんですが、コメディの経験はあまりないし、どうやったら上手く演じ分けられるんだろう?と思って。岸谷さんがやると、すごく面白いのになあ。どうすればいいんでしょう?」
岸谷「ハハハ。真剣佑は、いつも聞いてくるよね。“どうしたら上手くなるんですか?”って(笑)。でも、難しい役なんだから、苦労するのは当たり前。それに今のもがきは間違いなく、次のステップに向かうためのものだから、見ていて頼もしいよ」
新田「そうですか? 今は不安しかないんですけど」
岸谷「大丈夫。実際に今、すごい勢いで上手くなっているから。俺も20代の頃は色々なレッスンに通って、舞台に立つための武器を備えることを心がけたんだけど、真剣佑もこれから30歳までにたくさんの技をとことん身につけていくといいよ。そうすれば、相当すごい舞台俳優になると思う。今だって、真剣佑を舞台に立たせないのは演劇界の損失だと思うくらい、いい素材だからね」
新田「ありがとうございます。でも今は正直、先のことはおろか、周りを見る余裕すらなく、自分とたたかっていて。こんなにもがき苦しむのは初めてです。アトラスが持っている様々な顔を、しっかりとメリハリをつけて表現できるようなりたいなあ」
岸谷「そうだね。実は、俺もまだ全体の演出で手いっぱいで、自分の台詞を覚えるのはこれから(笑)。いつものことではあるけれど、稽古場での最後の稽古が終わって、劇場入りするまでが俺の時間。ガンガン声を出して、一人稽古するよ」