農地を奪われた生きものたちは、絶滅危惧種や希少種などのレッテルを貼られているものが少なくない。これらのほとんどは在来種と呼ばれるもので、外来種と違い、もともとその土地に棲んでいた生きものたちだ。
蝶のような触角をもつツノトンボ。トンボという名前だが、じつはウスバカゲロウの仲間。かつて光の田園には、稲木に使われるクヌギの古木が並んでいた。なかには、一抱えもあるどっしりした幹のものもあり、オオクワガタが棲みついていた。標高が低く、雪があまり降らない地域なので、オオクワガタの生息地としては絶好の場所だった。
しかし25年ほど前、アトリエ周辺の田園が圃場(ほじょう)整備されたとき、カキの古木諸もろ共とも、クヌギは取り払われてしまった。 あまりの驚きに、古木の行方を私なりに追求したが、どうも焼却処分がなされているらしいと聞いて愕然とした覚えがある。
(次回は6月12日更新予定です。お楽しみに。)
今森光彦
1954年滋賀県生まれ。写真家。 切り絵作家。
第20回木村伊兵衛写真賞、第28回土門拳賞などを受賞。著書に『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社)、『今森光彦ペーパーカットアート おとなの切り紙』(山と溪谷社)ほか。
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