前回「
「4つの新アンチエイジング習慣」で見た目の若さを維持する」で、心身の不調や病気のリスクを減らすのに「温かい家」が重要な役割を果たしているとご紹介しました。 アンチエイジングに理想的な住環境について、近畿大学建築学部長・教授である岩前 篤先生に詳しいお話をお聞きしました。
【新・アンチエイジング習慣】住環境
快適な室温を保つ「暖かい家」が健康寿命を延ばす
岩前 篤先生断熱性に優れた家こそ、究極の「アンチエイジング・ハウス」
「冷えは万病のもと」といわれますが、日本を含む世界13か国で気温と死亡の関連を調べた研究によると、気温が死因にかかわる症例のうち、大半が低気温によるものでした。
また、日本の低気温による死亡者数が12万人に上ることも判明しました。この背景には、日本の住宅事情が深く関与していると近畿大学建築学部長・教授の岩前 篤先生は指摘します。
「そもそも日本の住宅は夏の暑さ対策が中心で、冬の寒さは我慢するものと考えられてきました。そのため室温の低さが問題で、欧米の住宅に比べて対策も遅れています」。
一方で、断熱性能を上げるほど健康状態がよくなることもわかってきました。これは2013年に岩前先生が報告した大規模調査結果で、新築の戸建住宅に転居した約2万4000人を対象に、転居後に健康状態や諸症状が改善した人の割合を住宅の断熱ランクごとに調べたものです。
英国の住宅健康安全性評価は健康的な室温を21度に設定
「なかでもG5(ゼロエネルギーハウス基準より高い断熱性能がある)レベルの住宅 に転居した人の8割以上は健康状態をはじめ、手足の冷え、咳、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、かゆみなど、さまざまな症状が改善していました」
つまり、健康状態を維持・向上させるには快適な室温を保つことが極めて重要だということです。住宅の健康安全性を評価する英国のHHSRSでは、健康的な室温を21度と定めています。さらに、断熱性能が高い住宅は暖かいだけでなく、左ページのようなさまざまなメリットがあり、高い健康効果が期待できるといいます。
「断熱性に優れた家こそ、究極のアンチエイジング・ハウスといえるでしょう。自宅を改修・新築する際には、断熱性能にも着目し積極的に取り入れていきたいものです」と岩前先生はアドバイスしています。
室温と健康リスクの関係
室内における健康的な温度は21度、呼吸器障害や心疾患など深刻なリスクが現れる温度は16度とされている。
※岩前 篤『スマートウェルネスの狙い』をもとに作成冬期に死亡リスクが高まる病気はこんなにある!
ヒートショックで注目される循環器系疾患だけでなく、気温が下がることで死亡リスクが高まる病気は多数ある。
※厚生労働省人口動態統計(2004年)をもとに作成