国立新美術館で開催中の『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』で音声ガイドナビゲーターを務めている。――今回の作品で、楽しみにしていることは何ですか?
「過酷な状況に追い込まれる役なので、楽しみにできる要素はあまりないんですが、極限状態の人間にすごく興味があるので、個人的な役者のテーマとしては、繋がっているなと感じています。
自分はウィンストンとしてどう思うのか? 楽しみとは違いますが、そういう探究心みたいなものはとてもありますね」
――いつ頃から芽生えた興味なのですか?
「舞台『組曲虐殺』(2009年、2013年)で小林多喜二を演じさせてもらったことや、僕がクリスチャンだということもあると思います。
キリシタン弾圧の歴史や、あとはアウシュヴィッツで起きたことにも、知りたい、知っていたいという欲求があります。弾圧や拷問に耐えられた人もいれば、耐えられずに転んだ人もいる。
でも転んだ人を非難できるんだろうか? 自分はどっち側なんだろう?……色々考えずにいられません。
さらに言えば、弾圧や拷問を加えるのも人間、しかもその大半は普通の人なんですよね。たぶん一番怖いのは、何も考えずに従ってしまう状況。
そういう意味でも、『1984』を上演する意義を感じますし、こういった重い作品にガッツリ取り組めるのは、新国立劇場ならではだと思います」
――新国立劇場では以前、アルバイトもされていたそうですね。
「上京して初めてのバイト先が新国立劇場でした。まだ開場して1年くらいの頃で、切符のもぎりや劇場案内をやったり、遅れて来たお客様を席まで案内したり……。
お芝居もオペラもバレエも場内で半分くらい観られるのが嬉しくて、大学在学中にデビューすることになって辞めるまで、そのバイトを2年くらい続けました。
なので、やっぱり愛着がありますね。役者としては、『負傷者16人』(2012年)で初めて出させてもらいました」