WOWOWオリジナルミュージカルコメディ 福田雄一×井上芳雄『グリーン&ブラックス』が、好評により、毎月第4土曜の深夜に延長放送中。――舞台の魅力をどういったところに一番感じますか?
「どこでしょうね。毎回、作品も役も、演出も共演者も違うので、やってもやってもわからないことだらけです。
でも最近思うのは、ミュージカルとストレートプレイの両方をやれることが、自分にとってはいいバランスというか、幸せな状況なんだなということ。
華やかなミュージカルで、生きていることの素晴らしさを歌い、みんなで分かち合うことも人間の喜びだし、今回みたいに極限の状態で“人間って、何だろう?”と頭を抱えることも、人間だからできること。
僕は、その両方をやっていきたい。ただ、元々ミュージカルがやりたくてこの世界に入ったので、いまだにお芝居だけをやる時は、すごく緊張しますけど」
――いまだに、どこか苦手意識やアウェイ感があるのですね。
「ありますね。でも、かといって歌やミュージカルが怖くないかといえば、そんなことは全くない。むしろ怖さは年々増しています。
ただ、若い頃と違うのは、怖いのは自分だけじゃないんだとわかったこと。今は、共演者も演出家もプロデューサーも、みんな稽古初日は怖いんだなという安心感があります。
その中に自分もドキドキしながら入っていって、お互いを知ろうとしながら、ゼロから作品をつくる。その過程が、大変ではあるけれど、愛しいんです。
きっとそれは、どんな職場や人間関係にも言えることなんでしょうね」
――どういった理由で、そう思われるのでしょう?
「今年出演した『黒蜥蜴』(演出/デヴィッド・ルヴォー)で取材を受けた時に、ルヴォーに限らず、欧米の演出家は、大きな状況だけ用意して、その中で役者自身が自分の役や表現を見つけるのを待つ人が多いという話をしたんですね。
日本の演出家は、どちらかというと『そうじゃない』と頭ごなしに“ダメ出し”をする人が多いけれども、そもそも欧米には“ダメ出し”という言葉すらないんです、と。
そうしたら、その記事を読んでくださった方々から『やっぱり欧米と日本はそこが違うんですね』『子育てやスポーツ選手の育成にも当てはまりますね』といった反響が、すごくあって」