目的は素敵な共演者たちと
歌うことを楽しむこと
越路吹雪を歌う「愛の讃歌」と題したコンサートでは、玉三郎さんの熱き想いに応え、越路さんの後輩である元宝塚のトップスター、真琴つばささん、姿月あさとさん、大空ゆうひさん、水 夏希さん、霧矢大夢さん、凰稀かなめさんの6人と、ミュージカル俳優の海宝直人さんが共演します。メンバーを見ただけでもわくわくしますが、ブルガリ プライベート ラウンジで行われた制作発表記者会見では、その期待もさらに大きくなりました。玉三郎さんによる「愛の讃歌」の披露に始まり、6人のイブニングドレスにブルガリのジュエリーをまとった元宝塚トップスターとミュージカル界の新星・海宝直人さん全員で『すみれの花咲く頃』を歌うという素敵な演出。本番ではどのようなことを目指しているのでしょうか。
「レジェンド的な存在の方の名を冠したコンサートなので、伝統とか歌い継ぐ、ということがキーワードになってしまいがちですが、私が目指しているのは“皆で楽しく歌いましょう”というひと言に尽きます。私が越路さんのショーを拝見していて、エディット・ピアフを受け継いでいるというよりも、とにかく素敵だったということだけが心に残っています。だから、皆さんと歌うことを楽しめたらと思っています。今回の元宝塚の方たちとは初めてご一緒しますが、残念ながら私が宝塚を拝見していたのは、眞帆志ぶきさんの時代ですので、皆さんの現役時代を知らないんですよ。でも、主役を務めている方たちなので、とても本番に強いですね。たとえ稽古ができていなかったとしても、まるで稽古をしてきているような顔をして、さらっとできてしまう。ですから、とても楽ですね。海宝直人さんについては、彼が演じる『レ・ミゼラブル』のマリウスは拝見させていただきましたが、とてもナイーブなマリウスが日本にいるんだなと思いました。自分だけを押し出さないところが、とてもいいと思いました」
今回のコンサートには、歌舞伎では演出も手がける玉三郎さんならではのこだわりが生かされます。
「歌舞伎でも、ショーでも、舞台は衣裳が大事です。出演してくださる元宝塚の皆さんは身長がある方ばかりなので、イブニングドレスの縦のラインを美しく着こなしてくれると思います。イタリアのフィレンツェに私が昔から通っている生地屋さんがあるんですが、去年行われたリサイタルの前後にちょうどイタリアに行っていたので、“もしも”と思って買ってきた生地をうまく使うことができました。まるで工芸品のような素晴らしい生地ばかりを扱っているのですが、今回も6人分をお願いしました。その衣裳はもちろん、本番では私もブルガリのジュエリーをつけさせていただきますので、目でも楽しんでいただけるコンサートになると思います。越路吹雪さんの持ち歌である『愛の讃歌』を歌うのは避けたかったのですが、NHKホールくらいの規模ですと、ヒット曲も披露しなければならないと思って、歌うことにしました。こうした曲の歌詞は岩谷時子さんが越路さんのために、日本の歌のために作詞したものですから、すっと心に伝わりますね。演出家の方たちから一字一句に至るまで注文されて書き上げたもので、そうでなければできなかった作品です。岩谷さんが“一つの言葉からいろんな意味が取れるものを選ぶのは大変よ”と仰っていたのを覚えています。歌舞伎には“台詞を歌う”という言葉がありますので、人の心に届かせるには“歌を語る”という両方が大切だと私は思います」
選りすぐりの衣裳に、歌う曲に、共演者に、そして越路吹雪さんに、玉三郎さんの思いの詰まった宝石箱のようなコンサートが、あなたを待っています。
坂東玉三郎/Tamasaburo Bando
歌舞伎俳優
1957年12月東横ホール『寺子屋』の小太郎で坂東喜の字を名乗り初舞台。1964年6月十四代目守田勘弥の養子となり、歌舞伎座『心中刃は氷の朔日』のおたま他で五代目坂東玉三郎を襲名。泉鏡花の唯美的な世界の舞台化にも意欲的で、代表作の『天守物語』をはじめ数々の優れた舞台を創りあげてきた。また歌舞伎の枠を超え、世界の芸術家まで大きな影響を与え、賞賛を得てきた。ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場に招聘される、ヨーヨー・マなど世界の超一流の芸術家たちと多彩なコラボレーションを展開し、国際的にも活躍。映画監督としても独自の映像美を創造。同年9月に歌舞伎女方として5人目となる重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。2013年にはフランス芸術文化章最高章「コマンドゥール」を受章。
坂東玉三郎 越路吹雪を歌う「愛の賛歌」日時/2018年4月12日(木) 17時45分開場/18時30分開演
会場/NHKホール
チケット/SS席1万2500円 S席1万1000円 A席5000円*全席指定/税込 未就学児 入場不可
お問い合わせ/キョードー東京 電話0570-550-799(平日11時~18時 土日祝10時~18時)
http://kyodotokyo.com出演/坂東玉三郎
真琴つばさ、大空ゆうひ、水夏希、霧矢大夢、凰稀かなめ、海宝直人
演奏/三枝伸太郎とグランオーケストラ
撮影/岡本隆史 取材・文/山下シオン