2013年のテレビドラマ『半沢直樹』で演じた国税局の黒崎駿一役で、一躍注目を集めた。――確かに、設定はジキルとハイドですが、中身はほとんど三谷さんのオリジナルです。
「そうなんです。僕が演じるジキルは、基本的にはとても真面目な男。でも失敗をごまかそうとしたばっかりに、辻褄合わせの嘘が嘘を呼んで大騒動になっていく……というお話で。今回、改めて面白いなと思ったのは、まさに今この国で起きている、あの問題と同じなんですよ」
――奇しくもタイムリーな再演になりましたね。
「そうですね。人が面白いと思うものは、時と場合、それから、その人が育った時代や環境によっても違ってくるじゃないですか。そんな中で、『ジキル博士とハイド氏』に目をつけて、こういうコメディをつくり出す三谷さんは、本当にすごいなと思います。さすが、ずっとトップを走り続けている方。よく毎回、面白いことを思いつくものですよね。頭の中はどうなっているんだろう?と思いますよ」
――演出家としての三谷さんはどんな印象ですか?
「器が大きい方という印象です。色々なアイディアを稽古場に持って来られますし、ここを歌舞伎風にできますか?と言ってくださったりして、こちらが持っているものを生かそうとしてくださる。三谷さんご自身も楽しんでいらっしゃることがすごく伝わってくるので、僕らもそれに応えたくなるんですよ。とても楽しい稽古場です」
――初演の際は、愛之助さんや藤井さんの汗だくになっての熱演が、さらに笑いを呼んでいました。
「セットの階段を全力で駆け上ったり、下りたり……もう必死で走り回っていましたからね。着ている衣装がタキシードですから余計に暑くて、毎回、汗だくになりました。この階段さえなければ!と何度思ったことか(笑)。とにかく最後まで気が抜けないお芝居です」
今年8月には新橋演舞場の新作歌舞伎『NARUTO―ナルト―』に出演。市川猿之助さんととWキャストで、うちはマダラ役を演じる。