私が受けたクラスは初心者向けのクラスだったものの、その時はすでに2期目の修了間際。先生も、日本人のド素人が簡単について行けるわけがないと思ったのでしょうが、私、人の真似をして動くのがかなり得意でして、なんでも習い事の出だしは好調なのです。また、一応元プロダンサーの意地もあるため先生の後ろにピッタリと付き、なんとか遅れを取るまいと必死でついて行きました。
この辺りから、徐々にスタジオのセンターに躍り出てしまう私。隅っこで幸せ……なんていってたのが、嘘だとバレ始めます。
そして、先生も素人にしては、なかなかやるな!と認めてくれたのか、指導にも熱が入り始め、「そうよ!その感じ!聖子、あなたは獣!野獣よ!パーフェクトビースト!」と、まくし立てます。「ん……パーフェクト“ビースト”って、け、獣?先生、それは褒めてるんでしょうか?」と言った顔をすると、野獣!と言う表現はフラメンコ界では最大の褒め言葉なんだと、生徒さんたちが教えてくれました。
短いながらも充実したレッスンを終え、ではでは本物の野獣を観に行こうではないか!!と、さっそくレッスンの翌日に憧れのタブラオへと赴いたのでした。ちょっとオシャレして出かけたい時は、もちろんきもので。
数あるタブラオの中で、地元の友人に薦められて私たちが訪れたのがこちら。ボルン地区にある、隠れ家風タブラオ、「エスパイ・バロック」。分かりやすい場所にあるにもかかわらず、“隠れ”過ぎてて一度通り過ぎてしまいました。
昔の建物を利用して作られたこちらのタブラオ。重厚な扉の小さな入り口を入ると、そこには中世の雰囲気が漂う異空間が広がります。ショーが始まるまでの間は、入り口の庭で寛いだり、ワインを飲みながらウェイティングルームで美術品を鑑賞したりと、各々の楽しみ方でリラックスできます。