旬を愛でる花旅・庭めぐりとは…毎週水曜日は、ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが“今が旬”の花の名所情報をお届け。今回は花が咲き乱れる草原のように美しい庭をご紹介します。
旬を愛でる花旅・庭めぐり(33)まるでリバティーの花柄! 美しいメドウに心華やぐ〜神奈川・神奈川県立花と緑のふれあいセンター「花菜(かな)ガーデン」
「花菜ガーデン」を入ると芝生の先に広がる三日月山のパノラマ大花壇。斜面いっぱいに花咲く景色に感動。メドウはいま世界的にも注目のガーデンスタイル
「どんなスタイルの庭がお好きですか?」
そう尋ねられたイギリスのエリザベス女王はいくつかのスタイルを挙げられましたが、その一つ、メドウについて次のようにコメントされています。
「メドウはとても美しい庭。けれどいちばん難しい庭」
メドウ(meadow)とは直訳すると牧草地のこと。牧草地や草原のように、自然に季節の花が咲き乱れるナチュラルな庭のことをいい、イギリス人がこよなく愛するガーデンスタイルです。
本来は自然の生態系、自然のサイクルそのままの庭を指しますが、それでは必ずしも美しく管理できないので、その景色を生み出すために、自生種や園芸種が調和するバランスを見つけ、人の手が加えられる場合がほとんどです。
2012年に開催されたロンドンオリンピックでは、メインスタジアム周辺につくられた「ゴールドメドウ」が注目を浴び、以降、メドウは世界的にも人気のガーデンスタイルとなっています。
毎年タネをミックスしてまく三日月山のメドウ。ワイルドフラワーが咲くナチュラルな景色を眺めていると、心が癒やされる。ナチュラルで美しいメドウ、じつは日本でも見ることができます
神奈川県平塚市にある神奈川県立花と緑のふれあいセンター「花菜ガーデン」。
ここには春から初夏にかけて次々と移り変って花が咲き誇るメドウがあり、ちょうどいま最後の見頃を迎えています。
早めに咲き出したのがリナリア。オオバコ科(ゴマノハグサ科)の一年草で、和名はヒメキンギョソウ。繊細な茎のラインが風になびく様子も美しく、三日月山の斜面は優しい色に染まる。4月中旬から咲き出したヤグルマギク。キク科の一年草で、欧米ではセントーレアの学名で呼ばれる。イングリッシュガーデンでよく利用される花で、特にブルーの花色が美しい。美しい花色に染まる三日月山の斜面は絶景
「花菜ガーデン」のメドウは、エントランスを入ってすぐに広がる芝生の向こうにあります。
三日月の形にカーブを描く斜面、三日月山のパノラマ大花壇は、春から初夏にかけて、さまざまな一年草が次々と咲き変わり、美しい景色を生み出します。
4月上旬に出かけたときには、リナリアがピンクからパープルのグラデーションで斜面を埋め尽くしていましたが、中旬からヤグルマギクのピンクやブルーが加わり、そして下旬からはポピーの赤や黄色で斜面が一段と華やかに。
一面花で埋め尽くされる景色は、まるでリバティプリント、もしくはキャスキッドソンの花柄のような美しさで、私はこの景色を見るといつも「このまま裁断してワンピースにしたい!」と思うのです。
4月下旬からはポピーが主役に。これはヒナゲシとも呼ばれるシャーレーポピー。鮮やかな花色で斜面が染まる景色は圧巻。輝くようなオレンジ色のポピーは、カリフォルニアポピー。和名のハナビシソウでも知られる。管理しやすいワイルドフラワーで、メドウには欠かせない。三日月のカーブに沿って、花に埋もれるように園路を歩いていると、心が華やぎ、なんとも幸せな気持ちになります。
毎年、種をミックスしてまくのだそうですが、その年の気候やまいた場所の日照条件などで、ヤグルマギクのブルーが偏る、ポピーの赤が多く咲きすぎるなど、ガーデナーさんたちから見れば思い通りに行かない面もあるそうです。
しかし、色や花の種類に偏りがあるのも、むしろ自然な風景で魅力的だと私は感じます。
今年は花の開花が早く、5月の中旬にはポピーのカラフルな色で埋め尽くされそうな勢いだそうです。
早めに出かけて、その美しい景色をご堪能ください。晴れた日には、三日月山から花の斜面越しに富士山が見える、インスタ映えする景色に出会えます。
モダンローズのエリアはまるでバラの花色で埋め尽くされたかのような密度感。この圧倒的なボリュームは本当に見応えがある。ドラマチックなバラの景色に幸福度MAX!
さて、今年はサクラの開花がとても早く、それに伴いチューリップなどの球根や春の花が例年になく早い旬を迎えました。そして、バラの開花も早い!
4月中旬には黄モッコウが満開となり、すでに早咲きのつるバラも咲き始めました。
「花菜ガーデン」には1540品種、約2630株と、関東有数の品種数を誇る素晴らしいバラ園があり、5月7日〜6月3日までローズフェスティバルが開催されます。
昨年より40品種、約330株増えて、更なる充実ぶりです。
バラは品種によって開花時期が異なりますが、今年は少し早めのお出かけがおすすめです。
「花菜ガーデン」のバラ園は、オールドローズ、クライミングローズとシュラブローズ、モダンローズ、野生のバラなど、種類ごとにまとめられているのでとても見やすく、コンパクトに設計されているため密度感が高く、充実した庭めぐりが楽しめるのが特徴。
また、アーチ、パーゴラ、ブッシュとさまざまな仕立てを見ることができ、そのどれもが非常に管理がよい状態で、バラを栽培している方にはよいお手本となります。
花を間近で眺めることができるので、庭に植えたいお気に入りのバラを探しながらゆっくりと観賞してみてはいかがでしょう。
ローズフェスティバルの期間には、バラの達人たちによるさまざまな講演会も予定されていますので、「花菜ガーデン」のホームページで日程を確認してみてください。
4月中旬に訪ねたときには、‘リージャンロードクライマー’がすでに咲き誇っていてびっくり。早咲きで生育旺盛なバラで、そばにある木に絡まって上の方まで咲くダイナミックな姿を楽しめた。庭めぐりに少し疲れたら、エントランスの手前にある「キッチンHana」でブレイクを
6月3日(日)まではローズフェスティバル特別メニューとなり、イタリアンテイストの魚料理、肉料理のセットのほか、新鮮な野菜たっぷりの「Hana御膳」(限定50食)が用意されています。
バラとラズベリーのジェラートは鮮やかな色がとてもきれいなのでぜひ食べてみてください。
初夏の一日を、美しいガーデンの中で心ゆくまでのんごり過ごす。そんな贅沢な時間を楽しめる魅力的なガーデンです。