現代の家族を“喜劇”で描きたい。そんな山田洋次監督の思いのもと、スタートした『家族はつらいよ』。
「熟年離婚」「無縁社会」と、毎回、現代の日本が直面する課題を描いてきたシリーズ3作目のテーマは「主婦への讃歌」。
“現場に入れば、考えなくても自然に富子さんとして、家族への感情が湧いてくるんです”という吉行和子さんが語る山田監督作品の魅力、平田家の魅力とは?
――『家族はつらいよ』シリーズも3作目、『東京家族』から数えると4作目になりますね。
『東京家族』は別の話ですけれど、同じメンバーで同じ家族を続けることは、そうないことだと思うんです。現場に入る前も、新たに始まるというよりはずっと続いている感じで、家族を愛する母親の気持ちは3作を通じて変わりません。
――平田家は、吉行さんにとって擬似家族のようなものなのでしょうか?
フィクションではあるけれど、富子さんを演じることで、私は初めて家族を経験させてもらっているんです。もちろん私にも家族はいましたが、うちは一緒に食事したり、行動することもなかったし、今は全くひとりで暮らしています。きっと家族のおもしろさ、楽しさ、大切さを味わうことなく一生を終えるのだろうと思っていたら、『東京家族』『家族はつらいよ』のお話をいただき、初めて家族というものを感じ、考えるようになりました。とてもありがたいことですし、いい経験をさせてもらっています。