大切なきものを守ってくれる桐を、モダンな乱れ盆に
乱れ盆を使わないときには内箱を納めて蓋をすれば、中に小物を仕舞っておける。蓋も深さがあるので、裏返して乱れ盆として使うことも可能。大切なきものを湿気や虫、熱からも守ってくれる桐は、古来きもの簞笥の材料として重宝されてきました。今回、加茂桐簞笥の職人技を結集して乱れ盆を製作していただきました。
新潟・加茂で桐簞笥の製作が興ったのは江戸時代・天明年間のことといわれています。加茂を囲む山々には豊富に桐があり、また船による交通・運送が盛んだった当時は近くを流れる加茂川がその役割を担っていました。こうした地の利を生かして生産が盛んになり、今では国内生産量1位を誇ります。
屋外に桐材を並べて雨雪にさらしながら、時間をかけて自然乾燥させる。この工程によって長く使っても狂いの生じない桐簞笥ができ上がる。加茂では、使用する桐材を3年以上もの月日をかけて乾燥させる「板干し」を行います。雨雪にさらしてじっくりと自然乾燥させることで、しっかりとあくが抜け、長年使っても狂いの生じない美しい板に仕上がります。
こうして整えられた板を、でき上がりの様子を想定しながら柾目の調子が合うように細かく板組みし、金属の釘などを一切使わずに接いで組み上げてゆくのです。
完成した加茂の桐簞笥は100年以上もつともいわれています。何年もの時間をかけて最高の状態にした桐材を、職人の熟練の技によって組み上げる――、この手間ひまこそが加茂の桐簞笥の日本一たる所以といえるでしょう。
乱れ盆を製作してくださった「茂野タンス店」が、現代の住空間に合う桐家具として提案するコレクションの1つ「ラ・キリ タワー」。今回ご協力いただいたかた
茂野タンス店 茂野克司さん
加茂桐簞笥の伝統を伝える3代目ご主人。フルオーダーメイドや、デザイナーと協力したモダン桐家具など、時代に即した桐簞笥のあり方を提案する。新潟県南蒲原郡田上町原ケ崎新田30-1
TEL:0256(57)3610
家庭画報×加茂桐簞笥 乱れ盆のご購入方法
「乱れ盆」外寸約60×36×9センチ 7万8100円(税・送料別)。購入をご希望のかたは、直接「茂野タンス店」にご注文ください。ご注文はFAXまたはメールにてお願いいたします。
FAX/0256(57)5222
メール/
info@kamono.com ※ご注文が確定してから製作するため、商品のお届けにはお時間がかかります。また、商品は一つ一つ手作りのため、仕上がりが写真とは少々異なる場合があります。 撮影/本誌・西山 航
「家庭画報」2018年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。