「熱海五郎一座」は全部で7人。ほかに、渡辺正行さん、ラサール石井さん、春風亭昇太さん、深沢邦之さんの4人がいる。 ――年に1度のこの一座での公演、メンバーの皆さんも楽しみにされているのでは?
東: 「楽しみですよ。祭りみたいなもんですね(笑)。稽古で自分なりに考えて色々やったことに、三宅さん達から『もうちょっとこうしたら?』『それだったら、こうしたほうがいいよ』と、ヒントをもらえるのも嬉しいし、そうやってつくっていったものをドキドキしながら本番でやって、見事に笑いの花が開いたときは、さらに嬉しい。それが毎回楽しいんです」
小倉: 「僕は本番より稽古が楽しみですね。人前に出るのが苦手で、本番はものすごく緊張するので、だいたい何でも稽古のほうが好きなんですけど(笑)、特にこの一座の稽古は楽しくて。だって、テレビでも活躍している60代のおじさん達が、バカなことを一生懸命やるんですよ(笑)。若手の東MAX(アズマックス)と深沢(邦之)くんですら、もうすぐ50歳だもんね」
東: 「はい(笑)。やっぱり年をとればとるほど、バカなことを本気でやると面白いですよね。しかもいい大人が、くだらないギャグを何度も何度も練習するじゃないですか」
小倉 :「なべ(渡辺) さんとか、ズボンを下げるだけのギャグを何回も稽古するしね(笑)」
東: 「その揚げ句、バサッとカットされたりするから、また面白いんですよね(笑)」
――熱海五郎一座の人気の秘密は、そんな皆さんの楽しい雰囲気が、舞台からにじみ出ているところにもあるんでしょうね。
三宅:「こういうコメディって、稽古場の雰囲気がそのまま舞台に出ますからね。誰かが失敗しても、フォローして笑いに持っていったり、フォローしたやつが失敗して、みんなで大笑いしたり……そういう稽古場の雰囲気を、お客さんも感じるんだろうなあと思います」
小倉 :「だから三宅さんは、稽古場の雰囲気づくりをすごく大事にしますよね。ただ、笑いには厳しい。そこそこ笑いが起きても、カットされちゃう」
三宅 :「そうしないと、役者が損するからね。笑いが小さいと、調子に乗ってやって失敗したように見えてしまうから」
小倉: 「そこなんですよ。『ここ、カットね』って言われると寂しい気持ちになるんだけど、後から親の言葉みたいに『それは、お前のためなんだよ』ってことがわかってくる(笑)。三宅さんの頭の中では、ここでこうなってこうなるから笑いがくる……っていう笑いの計算ができていて、だいたいその通りになるからすごい。それをSET(劇団スーパー・エキセントリック・シアター)で、もう40年近く側で見ているのに、いまだに雰囲気で笑いをやってる自分が、ちょっと嫌になるよ(苦笑)」
実際に小型船舶1級免許を持っている小倉さんは豪華客船の船長役、東さんは副船長役で出演。さて、どんな事件が巻き起こるか!?東: 「三宅さんは、毎回ちゃんと劇場サイズに合った笑いとエンターテインメントをつくるじゃないですか。それもすごいなと思います」
三宅: 「まあ、それなりに長くやってきてるし、もともと東京の笑いを大きな場所でやりたいという思いがあったからね。それが新橋演舞場。昔、藤山寛美さんの喜劇を新橋演舞場で観て、『なんで東京のど真ん中で、関西の笑いを観なきゃいけないんだ!?』と思ったんだよ。浅草で観た『東 八郎劇団』とか、そういうものをやるべきだと思っていた」
小倉: 「考えてることもデカいんだよなあ」
三宅 :「新橋演舞場の熱海五郎一座には、そういう思いが全部詰まっているから、みんな腕があって面白いんだけど、その笑わせ方だと、ちょっと東京じゃないかもしれないなっていう勝手な思いもあるんだよね。そうやってつくってきた“熱海五郎一座の笑い”を大勢の皆さんが観に来てくれるようになったことが本当に嬉しい。とりあえず、新橋演舞場に進出したときに、コーラの早飲みとかそういうリーダー(渡辺正行さん)の細かい定番ネタを全部カットしたのは、正解だったね(笑)」