爽やかな品格をもたらす白地の帯
オーロラ色の帯と並んで紬の訪問着に活躍する帯がこちら。
白地ベースのすっきりとした抜け感を生む袋帯。季節を問わない文様のため、どんなきものにも品格をもたらしてくれる重宝な袋帯です。帯揚げや帯締めに強い色を持ってくると少し暑苦しく感じられるため、5月の小物合わせは、色が際立たないように、できるだけ淡いトーンを用いることが私のコーディネートのコツ。帯に馴染ませるほどに、さりげない色を用いると、すっきりとした印象を与えます。
季節限定の贅沢な見返り美人
ほのかにグリーンがかった象牙色の無地の結城紬も、この季節に清々しい風を運んでくれるお気に入りの一枚。菖蒲の染め帯を合わせて今月限りの見返り美人に(笑)。
この帯の図案は、実は頂戴した風呂敷に描かれていたもの!水辺の雅味を写したような、あまりの美しさに心を奪われて、馴染みの呉服店に持ち込んで同じように描いていただきました。
地色は清雅な瓶覗(かめのぞき)色で、タレの部分だけを若緑に。前帯はあえて柄を描かず瓶覗色の無地にすることで、お太鼓の菖蒲の柄を一層印象付けると同時に、帯留めが映える一本となりました。この日は、帯留めを八つ橋に見立てて、装いのアクセントにしました。
一色采子/Saiko Isshiki
女優
日本画家の故・大山忠作氏の長女として東京都に生まれる。毎日をきもので暮らしたお母様のもとで、コーディネートや着こなしのセンスを磨き、現在はファッションのアイテムを取り入れながら独自のスタイルを楽しむ。趣味の日本舞踊や三味線、長唄では名取になるほど、古典芸能への造詣も深い。現在は、福島県にある二本松市大山忠作美術館の名誉館長や二本松市の観光大使も務める。
【連載】女優 一色采子の「母のタンス、娘のセンス」
撮影/岡積千可 へアメイク・着付け/林さやか 構成・取材・文/樺澤貴子