数年、数十年経って出てくる症状にも対応するために、小児がんの晩期合併症に備えて、治療の記録を詳細に残しておくことをおすすめします。
国立成育医療 研究センター 小児がんセンター センター長
松本公一さん小児がんの長期フォローアップ
がんの治療として、薬物療法(特に抗がん剤治療)や放射線療法を受けたときには、治療がもとになって起こる合併症が数年あるいは数十年と長い年月が経ってから出る場合があります(晩期合併症)。
発育途上にある小児がんの患者ではこの晩期合併症が学業や就労、結婚や妊娠、子育てといった人生設計にもかかわるため、心理的負担を感じるケースも多く、注意が必要です。
がんの種類や治療によって異なりますが、晩期合併症としては、二次がん、ホルモンや生殖器に関連する合併症(思春期早発症、精子の減少や無精子症、卵巣機能不全や卵子の減少、低身長、下垂体ホルモンの減少によりケガや感染症が重症化しやすい中枢性副腎機能不全、疲労感などの原因になる甲状腺機能障害、乳房の発達や母乳の分泌が促進される高プロラクチン血症など)、肝臓・心臓・肺・消化器・泌尿器・目・耳・歯など放射線照射を受けた臓器の障害、骨粗しょう症や脊柱側弯症といった骨の障害などが挙げられます。
小児がんの再発や転移や多様な晩期合併症に注意していくために、小児がんの患者には長期のフォローアップが必要です。ただし、成長するにつれて、どの診療科にかかるかが課題になるケースがあります。
国立成育医療研究センター 小児がんセンター センター長の松本公一さんは、「小児がんは診療科が複数にわたることが多く、大人になってどの診療科にかかるかは一概には決められません。
白血病やリンパ腫など小児科と内科に共通する疾患では年齢とともに内科に引き継ぐ例もあり、骨軟部腫瘍や脳腫瘍など外科系診療科では最初の主治医や診療科が診ている例があります。成長してから自分のことを知り、考えるためにも治療の記録を残してほしいですね」と話します。