京都の暮らしに餅屋は欠かせない
大村しげさんの著書『京の食べもの歳時記』(中央公論社)には、おこわ(※)とお祝い事の結びつきや、京都の鳴海餅本店が紹介されています。こうした餅屋は饅頭が売られていることから「おまんやさん」と呼ばれ、一年を通じて京の暮らしと深いかかわりがあることを彼女は同著のなかで記述しました。
「わたしらは、おまんやさんの店先をながめて季節の到来を知り」、「おまんやさんなしでは、京の暮しは成り立たない」(『京の食べもの歳時記』)
※もち米を蒸したもの。鳴海餅本店といえば、なにをおいても赤飯です。赤飯の量は、350g 713円~1.8kg 1升木箱4040円(ともに税込み)まであります。通常の赤飯のほか、3代目が大正13年(1924年)に売り出した秋限定の栗赤飯も地元で愛される逸品です。鳴海餅本店のWebサイトに紹介されている下記の年中行事を見れば、それも納得。
1月/迎春、成人の日
2月/旧正月、初午
3月/雛祭り、お彼岸
4月/入学
5月/端午の節句
6月/大祓い
7月/土用の入り
8月/お盆
9月/敬老の日、お彼岸、中秋の名月
10月/各種レクリエーション、催し
11月/七五三
12月/事始め
それぞれの行事で決まった赤飯や餅、団子を用意するほか、日々のお華束(おけそく)(※)を購入するなど、古い暮らしの残る京都では、一年を通じて何度も餅屋に足を運びます。つまり、鳴海餅は京都の人々の暮らしに深く根付いたお店なのです。
※広義では仏前に供える餅。鳴海餅本店。店内には餅やもち米を使った饅頭や団子が並びます。