額縁は木製、マットは緑がかったダークグレーにしてコントラストをつけて、白いきもの地を引き立てた。右は麻に露草、左は絹地に花菖蒲が描かれている。Tips2
きものの絵柄を一枚の絵画として楽しむ
「姿見の横に掛けているのも、祖母が着ていたきものです。こちらも洗い張りをした後に、裾模様の部分を額装してもらいました」
ベッドルームの壁面を飾っている額は、一見水墨画のよう。
近づいて見てみると、麻地や絹地に描かれていることがわかります。
付け下げや絵羽柄の訪問着といった絵画性が高いきものは、“一枚の絵”として鑑賞できるようトリミングするのがポイント。
縦長に切り取り、余白の美を感じさせるように額装しています。
大切なものだからこそ、しまい込まずに“生かす”。
帯やきものを切るのには勇気と決断が必要でしたが、部屋に飾ってみると、毎日の暮らしをお祖母さまが見守ってくれているような心持ちになり、箪笥の奥に眠らせておくより額装してよかったと感じているそうです。
手前が、きものから作ったクッションカバー。小さな面積でも、その控えめでシックな柄ゆきからは、多美保さんのお祖母さまのセンスの良さをうかがい知ることができる。Tips3
きものを横長のクッションに仕立てて
もう一つ、きものを甦らせる素敵なアイディアをご紹介します。
それは、クッションカバーに仕立てること。
多美保さんは、
ベッドルームの室礼としていつも使っている横長のクッションの大きさに合わせて、形見のきものからカバーを作りました。
「ベッドルームは、最もプライベートな空間ですから、心が落ち着くデコレーションをしたいと思っています。たかが“モノ”、されど“モノ”とでも言いましょうか。“モノ”は記憶とか思いを纏っているんですね。なので、私はこの小さなクッションを目にするだけで、穏やかになれるんです」
洋服の仕立てと違い、糸を解けば1反の布に戻るという、再生を前提に作られたものきものは、形を変えて違ったアイテムにしやすいという利点があります。
衣類としての役目を終えたきものも、アイディア次第で暮らしと心に寄り添う大切な一品になるのです。