養生とは、老化を遅らせ、病気にならない体をつくるために重要な生活習慣を身につけること。「人生100年時代」を生き、生涯現役を目指す私たちにこそ必要な心がけです。
集中連載「生涯現役!養生術」第2回では、90歳目前にしてなお、休むことなく大作に挑み続ける日本画家・市丸節子さんの日常をご紹介します。(
前回の「生涯現役!養生術」第1回はこちらから。)
「ただひと筋に描き続ける。意志があれば、体は応じてくれます。」ーー市丸さん日本画家
市丸節子さん使命感を原動力に休みなく大作に挑む
展覧会の出品作を搬出した直後の市丸節子さん宅を訪ねると、壁に下絵途中の襖が立てかけられていました。取りかかっていたのは、青梅市(東京都)にある宗徳寺の8枚分の襖絵。
90歳目前にしてなお、休むことなく大作に挑み続けるエネルギーが小柄な体のどこから湧き出てくるのか不思議です。
「一度やると決めたら、誰のいうことも聞きません。やり始めたら最後までくらいつく。わがままで負けん気が強いのは父親ゆずりなんです」
その父親の猛反対を押し切って絵の道に進んだ市丸さんは、30代半ばで美人画の大家・伊東深水の内弟子に。鎌倉のアトリエで仕えた10年間が画家・市丸節子の土台になりました。
「先生は絵の具に対して非常に鋭く厳しい人でした。胡粉(日本画用の粉末白色顔料)が溶けたら一人前だといわれ、先生の胡粉作りは私の日課でした。溶く手を一瞬でも休めると先生が振り向いてじろっと見る。一心不乱に胡粉を溶かずして、どうして絵に魂を込められようか。先生に教わった日本画の伝統を世の中に伝えるのが私の使命。真剣勝負です。他のことを考える余裕なんてありません」
【伊東深水画伯直伝の方法で、心を込めて胡粉を溶く】
胡粉は牡蠣の殻を砕いた粉末状の白色顔料。日本画の下地や仕上げに用いる基本的な絵の具だ。膠を加えて団子状にし、適量の水を足して均等に溶く。最適な濃度の微妙な感触を、市丸さんの指が覚えている。