生きものたちが集う理想の里山「光の田園」を作るため、環境に欠かせない「水辺づくり」に取り組む今森光彦さん。敷地の開墾中に、夏場でもほんのりと湿って水が干上がらない場所を見つけました。(
前回まで)
今森光彦、環境農家への道
第14回 帰ってきた生きものたち
一円玉くらいの大きさのシマゲンゴロウ。ストライプがとてもおしゃれ。農薬がない水辺にしかみられない珍しい水生昆虫。(写真・文/今森光彦)
昨年の夏、その場所で感動的なことがおきた。
長雨が降ったあとに訪れてみると、ここに、大きな水たまりができていた。昔の根っこが細々と残っていたのだろうか、コナギやオモダカなどの水生植物が、活き活きと花を咲かせていた。
シオカラトンボ、ハラビロトンボたちも、元気よく飛翔しているではないか。さらに、水深わずか10cmくらいの浅瀬にタモ網を入れてみると、マツモムシやアメンボウに混じって、なんとシマゲンゴロウがたくさんみつかった。
このゲンゴロウは、近年激減した種類で、里山環境の健全さを知る生き証人のような昆虫でもある。
この発見はほんとうに嬉し かった。まだ何も手を付けていないのに、待ちきれずにお客さんが来てくれた、そんな気持ちになった。あらためて光の田園にいる喜びを、訪れた仲間たちと分かちあった。
このような頼もしい水辺候補が敷地内に2箇所あり、そこに、浅瀬の環境をつくることにした。湿地のまわりには、アトリエのため池から株分けしたショウブ、カサスゲなどの在来種を移植した。
農地に浅く窪地をつくる。田んぼをイメージした湿地づくりだ。