お茶の世界では5月になると炉から風炉になりますが、きものの世界では5月までが袷で6月から単衣に。四季のある日本は、こうした節目を大切にしながら季節の機微を受け止め、楽しみを見出してきました。
最近は温暖化の影響もあって、5月から単衣をお召しになる方も多くなりましたが、私は性分が古いタイプの日本人なのか、多少の痩せ我慢をしても(笑)、昔ながらのきもの暦を守っています。すでに単衣の季節を迎えましたが、今回の番外編ではまず5月末にきものでお出かけした様子をお届けします。
袷と単衣の間の季節といえば、紗袷(しゃあわせ)という贅沢なきものもありますが、私は袷のきものをいかにすっきりと装うかということを心がけます。まずは、そんな私なりの工夫をお目に入れます。
衣替え目前の、爽やかな着こなしのmyルール
〔其の一〕空色のワントーン
この連載でも既に何度かご紹介した、きもの愛好家の恒例の集い「常若会(とこわかかい)」が5月の末に催されました。選んだきものは、空色の紬に赤と黒の縞を後染めで描いた一枚。
黒地の帯などを合わせると、ぐっと古風になるため、透明感のある瓶覗(かめのぞき)の地にペイズリー柄を刺繍したノーブルな帯をコーディネート。この時季は、小物に強い色を多用しないことが「爽やかな着こなし」のmyルール。帯と帯締めはきものの地色に合わせて引き算し、帯揚げでほんのりと女性らしい珊瑚色をポイントにしました。
帯締めは帯に馴染ませながら、スモーキーなガラスの帯留めで5月の瑞々しさを表現しました。〔其の二〕全体のトーンを象牙色でまとめて
憧れの高橋惠子さんとのワンショット。舞台の終演後でメイクも落とされていたのに、この連載のお話をしたら改めてメイクをして快く一緒に写真を撮ってくださいました。明治座に出演していた高橋惠子さんの楽屋見舞いへは、母の白大島で。精緻な絣柄に後染めで加飾を施した贅沢な紬に、白地の塩瀬に更紗柄をアレンジしたエキゾチックな染め帯を合わせました。全体的に白を基調とした、すっきりと涼やかな着こなしを演出しました。
こちらの帯も母譲りの一本です。